「‥ったく!市丸さんのバカ!」




あの後とりあえず携帯と財布を持って急いで家を出たのだが到底5時には間に合わないので携帯で市丸さんに連絡を取ろうと試みたのだがどうしてだか繋がらない。

一定の速度を保ちながら走る電車を早く早くと急かしながら携帯のディスプレイを見つめると午後5時26分の文字。着信や新着メールも無い。






「ほんと‥何考えてるんだか」





ガラスに写る自分に向かって呟いた。














ようやく目的地にたどり着いたのは6時近くだった。





「市丸さん‥どこだろう」






未だに連絡も無いし、もう帰ってしまっただろうか、それとも。市丸の姿が見えないことへの不安ともしかしたらという淡い期待が入り交じってなんとも云えない気持ちになった。






(勝手に手紙入れといて‥携帯は繋がらないし、必死に来てみれば居ないし‥かと言って帰るのもなんだし、‥あぁもうっ‥)






寒空の下に自分一人がポツリと残されたような気がして、なんだか無償に泣きたくなった。






「市丸さんのバカ‥狐顔、変態、エロ魔神、自己中、」


「ひゃあ、酷い言われようやなぁ」


「‥っ!」






待ち望んだ声に振り返るとそこには紙袋を抱えた市丸が居た。






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