昔の事を思い出すと必ずと云って良いほど貴方は出てくる。いつも僕をからかって、抱き締めてすきだなんて云って。 あの頃の僕は恥ずかしさもあって本当に素直になれなくて突っぱねてたけど、貴方のことだいすきだったんですよ。 そう言えば誕生日は一緒にお祝いしようとか言ってたっけ。約束守れなくてごめんなさい。 せめて、死ぬ前にもう一度逢いたかったなぁ。ほら僕わかるんですよ、こうしてる間にも僕の心臓はどんどん音が弱くなっていって。 「イヅル」 あぁ夢だろうか。 夢じゃないなら今まで死にたがりだった僕だけれど、もう少し時間を下さい神様。本当に逢いたい人に今逢えたのです。今ならこの人にあの時言えなかっただいすきを素直に言える気がする。 ‥‥‥僕が最期に感じたのは懐かしい大きな手と頬に落ちた生暖かい水の感触だった。 「‥おやすみ、イヅル」 end, [*前] | [次#] |