部屋中白い。
デパートの陳列ハンガーラックが丸ごと必要になった。リビング全てがクローゼットになったような有様で、新品の純白に囲まれてソニックは待っている。待つのは好きじゃない。頬杖をついていっそいらだったような顔をして、手近な一枚の裾をべろんとめくり上げてケッという顔をした。
「あの、着たけど……」
「早く見せろ」
「なんか恥ずかしい」
「つべこべいうな」
白い林をかき分けて、いかにも恥じらった足取りでりんこが歩いてくる。畳にあわないロングのレースが長く尾を引いたマーメイドタイプ、プランナーなど邪魔者なので勿論呼びつけていないのでおろしたままの髪の毛にベールとティアラが載っかっている。真珠のようにつややかな白いドレスは、むろんのこと、ウェディングドレスだ。
「似合う?」
グローブに包まれた腕を引いた。もつれるように倒れ込む体を抱き留めた。
「当たり前だ。誰が選んだと思ってる」
「……乱暴にしてドレス破けちゃったらどうするの」
「これだけあるんだ。何着か裂いても惜しくないだろう」
ウェディングドレスで犯されると思っていなかったらしい。りんこはずいぶんびっくりした顔をした。なにを今更。
こんなまだるっこしい服いちいち脱がすなど面倒くさい。気に入ったのがあればまた買ってやるから、大人しく破かれていればいい。
「抱くぞ」
「ん……」
されるがままに身をゆだねるりんこに、ふいに、
「お前、昔のことを思い出したりするか?」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「思い出さない」
迷いなく言い切った。滝しぶきのようなベールの下、ほほえむりんこが見える。
「私は今、あなたと居られることだけが全てなんだから」
「そうか」
「そうだよ。おかしなソニックちゃん」
くすくす笑うりんこのベールを持ち上げて、
「ああ、そうだな」
幸せそうな唇にキスをした。