りんこがカレーとシチューはまっとうに作れる理由はただ一つ。
「木馬になる前に作り方を教わったからですよ」
「へえ」
一緒によりどり五個五十円のたまねぎを物色しながらサイタマは気のない返事をする。自分から聞いたくせにどういうことだ。
まありんこはまったく気にしていないので、別にいいのかもしれないけれど。金色に輝く中位の玉と、鈍い茶色のでっかい玉を見比べて難しい顔をしている。どっちをメンバーに加えたものか。
「ん? つまりどういうことだそれ」
「サイタマさんならどっち選ぶ?」
「でかい方」
「ブルーファイアならどっち選ぶだろう……」
「おい俺の意見は無視か」
長考。むむむと難しい顔。
「今日はぼっち飯?」
「ぼっちって言いかた! ふふふ、ブルーファイア帰ってくるって約束してるんです」
「へえー」
結局金色の方を選んだ。
「今日ってカレーの日なんだって」
「なんで?」
「さあ……」
「カレーといえばジェノスがなあ」
「はあ」
「りんこの料理でもカレーとシチューは普通だっつってた。……おいそんな胸張るとこじゃねえよ。それ以外まずいって意味だぞ」
「あーまあ。うん、そうだね……。ブルーファイアに教わったりしてるんだけどなあ」
「なんだろうなあの壊滅感」
「あ、昆布煮立たせる人にとやかく言われたくないです」
「うるせー。そういやカレーは? お袋?」
「教えてくれたの? うん、お袋。お母さん」
「怪人にも親はいるんだな」
「元々人間だからね!?」
「ニンジン好きか?」
「大好き」
「馬じゃん」
「人並みにだよ!」
「カレーは?」
「……飲み物?」
「マジかよ怪人じゃねえか」
「カレーが飲み物なのはヒーローだよ。一応」
「牧草は」
「サイタマさん私のことなんだと思ってます」
「りんこ」
「つまり!?」
「りんこはりんこだろ」
「コジコジ……?」
「なあ、福神漬け買わねえの?」
「あっ!」
一撃