▼素直になるジェノスともしもし主

 ジェノスが雷に当たって故障しました。


「お前車免許持ってたんだな」
「運転はできます」
「なあジェノス大丈夫なのか? うごかねーし口きかねーし……」
「大丈夫。さっきちょっとだけシステムログの方潜ってみたけど脳はちゃんとカバーされてました。まあジョイントの動作システムがバグっちゃって廃熱がうまくいってないので、中央演算装置の動きが鈍ってるんです」
「つまり」
「風邪に近い」
「サイボーグも風邪引くの?」
「近いって言いましたよね。まあ博士に直して貰えばすぐですよ」
「ん。頼んだ」
「Z市の平和はお任せします」
「おう」
「りんこ……」
「ジェノス? 起きられたの?」
「りんこさん」
「うん」
「俺は、おそらく、ここで死ぬんです」
「ああ風邪だわ」
「でしょう」
「死ぬ前に、伝えたいことが……」
「はいはい」
「本当は、尊敬していました」
「うん」
「嫌いなんかじゃありません」
「うん」
「いまわのきわまで素直になれなくて、ごめんなさい」
「いいよ」
「りんこさん……す、」
(ジェノスが腕を持ち上げようとして、思うように動かない)(りんこが覆い被さるように抱きつく)(安全を確認した思考系がシャットダウンされていく)(スリープモードへ強制移行)(つまり寝かしつけた)
「すごいなお前……母ちゃん?」
「こんなでかい子いる年じゃありません!」





「やっほーサイタマさん、余ったおかず持ってきました」
「カレー? シチュー?」
「唐揚げ?」
「なんでお前まで疑問系なの? …なにこれ」
「…唐揚げ? あ、今日はジェノスは」
「あーうんえーと悪いな」
「いえ。お大事にとだけ伝えといてください。あの子病み上がりに無理をしてぶり返しちゃうタイプだから」
「ぽいな」
「じゃ、また」
「おう」

「……帰りましたか」
「帰った。なあジェノス」
「申し訳ありません。なにも言わないでください」
「……」

(クローゼットのなかで三角座りでジェノスはぷるぷる震えている)(朦朧としていたくせに記憶はがっつり残っていた)(不幸にも)(自分がしてしまった告白やりんこからのハグをどう処理していいのかわからない)(ぷるぷるしている)

「うげ、なんだこれ!? 唐揚げ生臭すっぺえ!? りんこ……酢!?」
「!?」

(サイタマ先生はわざとじゃない)

一撃

prevnext

back




.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -