※ブルーファイア腕ぶっちからの展開
※ifストーリー的なあれっす
※もしもし本編でも書く予定だけどこれとはぜんぜん別の話になる予定
もう右ではりんこと手をつなぐことも抱きしめることもできないのか。
引きちぎられた腕を見て、怒りよりも痛みよりも先に思考に上ってきたのはそんなことだった。
病室につくまえから泣いていたしついた後もずっと泣いてる。そろそろ過呼吸でも起こしかねない。
「うっぐ、ふい、ひっく、うええっ」
「そんなに泣くなりんこ」
「………………っ」
「息を止めろとまでは言ってない!」
「だっで…こんなの……!」
「ヒーローになんだから命をかけて戦うのは当然だ。腕の一本で済んだのは幸運だった」
「…………うううっ…!」
「すまない。俺が弱いばかりに」
「ちがうっ! ブルーファイアは弱くないよ! そうじゃない……そんなんじゃ……!!」
ふっていたかぶりを止めて、
「あのね、……ごめん、なさい」
謝ることないのに。
りんこは身動きとれないブルーファイアに腕を伸ばす。遠慮しすぎな遅さでゆっくりゆっくりと身を寄せて、まるで「早くダメって言わないの本当に抱きついちゃうんだよ」と問いかけるようにことさらゆっくり体を近づけて。
そんなに遅いからブルーファイアの腕だって伸びる。
「……っ、」
りんこが耳元で涙をこらえようとする音がする。
もう片方しか残っていない腕でりんこの背中を抱き寄せた。おびえきって止まらない背筋のふるえが手のひらに思い切り伝わってくる。
「……すまなかった」
りんこがずっと鼻をすする。
「恐い思いをさせたな」
しがみつかれた。「うっ」と声が出るほど力強く。
りんこは泣きながら「ブルーファイア」と呼ぶ。何度でも呼ぶ。しゃくりあげてつっかえて横隔膜の痙攣に息を詰まらせて、何度だって呼ぶ。
しがみつくりんこの体から左腕を離した。走ってきたのだろう、ぐちゃぐちゃに乱れた髪の毛をすくように頭を撫でてやればりんこはもっと大きく泣き始める。鼓膜が破れそうだ。
両腕さえあれば抱きしめながら頭を撫でてやることができたのに。
今はそのどちらかしか選べない。
ひどく歯がゆい。
一撃