「お、」
「あ、こんにちは。寒いねー」
「おう。何やってんの? 雨宿り?」
「この通り傘持ってます。お迎え。ねえサイタマさんでも電車使うの?」
「使わね。走った方が早い」
「(新幹線より早そう…)! あれもしかして駅ビルのスーパー、セールとかやってません!?」
「当たり。つーかこの荷物見たらわかりそうだけど」
「わーいやった! 買い物してこ」
「すみません先生レジが込んでいて! …りんこ」
「あ、ジェノスも一緒に買い物してたんだ」
「なにやってるんだ風邪でも引きたいのかばかが」
「ああうん明日の仕事はいやだなあ。でも風邪引くわけにはいかないから」
「当然だ」
「社会人って大変だよな」
「サイタマさんって風邪引くの?」
「あーここ三年は体調崩したことねえなー」
「頭皮以外?」
「殴るぞ……」
「ごめん。あ、そだ二人とも傘ないでしょう? 一本いる?」
「マジで? サンキュー」
「先生それはダメです!」
「なんで?」
「なんで?」
「…先生ちょっと(手で来い来いして)」
「なになに」
「りんこはあっち行ってろ」
「うっ、ひどい」
「りんこが傘もって迎えってことは、どう考えても相手はアイツですよね(こしょこしょ)」
「だろうなあ(こしょこしょ)」
「一本俺たちが借りたとしますよ? 残った傘は一本、つまりすることは一つですね(こしょこしょ)」
「……あーなるほど」
「ねえなるほどって?」
「もうちょっと待っててくれ」
「うん」
「でもどーすんだ? 買ったばっかのパンとか紙袋だぜ。よりにもよってフランスパン。はみ出てっぞ」
「…………。先生雨を避けて走れませんか!」
「めんどくせえな。いいじゃねえかさせとけよ相合い傘(ひそひそ)」
「…先生はそれでいいんですか(ひそひそ)」
「別に(ひそ)」
「…りんこさんに恋愛感情を(ひそひそ)」
「だからちげーって! なんつーか、そういうんじゃねえんだよ、そういうんじゃ……」
「なにが?」
「傘貸してくれ」
「うん。はい」
「! 先生、」
「ほら来いよジェノス」
「あ、傘一本だから男相合い傘になっちゃう……」
「なんだその顔は」
「週間ヒーローにだけは気をつけてね」
「?」
「同棲中プロホモヒーロー相合い傘で買い物デートとか見出しつけられるから……ジェノス私じゃない! 私パパラッチじゃない!!」
「りんこ!」
「あ、ブルーファイア」
「おいお前、りんこに何をしてる!」
「……」
「……なんだその顔」
「……行きましょう先生」
「おう。借りてく、じゃあなー」
「はいー。気をつけてー」
「なんともなかったのか」
「うん。お帰りブルーファイア」
「ただいま。傘…」
「あ、ごめんね二人とも傘なくて困ってたから」
「いや、いいんだ。いいんだが……その、俺たちも……」
「あ、私ね小さい折りたたみ鞄にいつも入れてるから」
「えっ!?」
「えっ」
「へっきし!」
「くしゃみするときは口に手を当てろ。…寒い中待たせてすまない。風邪引いたら看病しにいく」
「(これだから風邪引くわけにいかないんだよね)ん、ありがとう」
「……なあ、」
「ん?」
「巻くか?」
「え?」
「マフラー」
「えっ」
(外したマフラーを勝手にりんこの首にぐるりと巻き付ける)
「……寒くない?」
「電車、暖かかったから」
「じゃあ、借りる」
「ああ」
「(いい匂いがするなあ…)買い物して帰ろ」
「ああ」