▼蛇の目でお迎えするもしもし主




「お、」

「あ、こんにちは。寒いねー」

「おう。何やってんの? 雨宿り?」

「この通り傘持ってます。お迎え。ねえサイタマさんでも電車使うの?」

「使わね。走った方が早い」

「(新幹線より早そう…)! あれもしかして駅ビルのスーパー、セールとかやってません!?」

「当たり。つーかこの荷物見たらわかりそうだけど」

「わーいやった! 買い物してこ」

「すみません先生レジが込んでいて! …りんこ」

「あ、ジェノスも一緒に買い物してたんだ」

「なにやってるんだ風邪でも引きたいのかばかが」

「ああうん明日の仕事はいやだなあ。でも風邪引くわけにはいかないから」

「当然だ」

「社会人って大変だよな」

「サイタマさんって風邪引くの?」

「あーここ三年は体調崩したことねえなー」

「頭皮以外?」

「殴るぞ……」

「ごめん。あ、そだ二人とも傘ないでしょう? 一本いる?」

「マジで? サンキュー」

「先生それはダメです!」

「なんで?」

「なんで?」

「…先生ちょっと(手で来い来いして)」

「なになに」

「りんこはあっち行ってろ」

「うっ、ひどい」

「りんこが傘もって迎えってことは、どう考えても相手はアイツですよね(こしょこしょ)」

「だろうなあ(こしょこしょ)」

「一本俺たちが借りたとしますよ? 残った傘は一本、つまりすることは一つですね(こしょこしょ)」

「……あーなるほど」

「ねえなるほどって?」

「もうちょっと待っててくれ」

「うん」

「でもどーすんだ? 買ったばっかのパンとか紙袋だぜ。よりにもよってフランスパン。はみ出てっぞ」

「…………。先生雨を避けて走れませんか!」

「めんどくせえな。いいじゃねえかさせとけよ相合い傘(ひそひそ)」

「…先生はそれでいいんですか(ひそひそ)」

「別に(ひそ)」

「…りんこさんに恋愛感情を(ひそひそ)」

「だからちげーって! なんつーか、そういうんじゃねえんだよ、そういうんじゃ……」

「なにが?」

「傘貸してくれ」

「うん。はい」

「! 先生、」

「ほら来いよジェノス」

「あ、傘一本だから男相合い傘になっちゃう……」

「なんだその顔は」

「週間ヒーローにだけは気をつけてね」

「?」

「同棲中プロホモヒーロー相合い傘で買い物デートとか見出しつけられるから……ジェノス私じゃない! 私パパラッチじゃない!!」

「りんこ!」

「あ、ブルーファイア」

「おいお前、りんこに何をしてる!」

「……」

「……なんだその顔」

「……行きましょう先生」

「おう。借りてく、じゃあなー」

「はいー。気をつけてー」

「なんともなかったのか」

「うん。お帰りブルーファイア」

「ただいま。傘…」

「あ、ごめんね二人とも傘なくて困ってたから」

「いや、いいんだ。いいんだが……その、俺たちも……」

「あ、私ね小さい折りたたみ鞄にいつも入れてるから」

「えっ!?」

「えっ」






「へっきし!」

「くしゃみするときは口に手を当てろ。…寒い中待たせてすまない。風邪引いたら看病しにいく」

「(これだから風邪引くわけにいかないんだよね)ん、ありがとう」

「……なあ、」

「ん?」

「巻くか?」

「え?」

「マフラー」

「えっ」

(外したマフラーを勝手にりんこの首にぐるりと巻き付ける)

「……寒くない?」

「電車、暖かかったから」

「じゃあ、借りる」

「ああ」

「(いい匂いがするなあ…)買い物して帰ろ」

「ああ」

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