「やっぱりお前、俺を恨んでるんだろう」
「なんで!? やだ泣かないソニックちゃんほらハンカチ」
「泣いてなど、ない……」
「わかったわかった、忍法目から鼻水出てるよ」
「うぐっ、ずびー!」
「(ハンカチで鼻かむ子って本当にいるんだもんなあ……)」
「……俺は、」
「うん」
「俺は悪くないぞ」
「うんうん」
「いや俺は悪い奴だが。お前を誘拐して監禁した」
「大丈夫大丈夫」
「だいじょばないっ!! おっ、おまっ、お前は!」
「うんうん」
「あの、弱っちいのと一緒にいたかったんだろう!?」
「そうだよ」
「俺が連れ去らなければ、お前はあれと一緒に居られたんだ……」
「そうだね」
「……恨まれて当然だ」
「ソニックちゃ、」
「でも、」
「うん」
「嫌いになるな」
「好きだよ」
「俺は、俺だってお前のことが大事で、」
「知ってるよ」
「……違う。違うお前は俺にとってただの依頼の品だからなんでもない!! 別にどう思われていようと知った事じゃないからな、ばかっ!」
「でも私はソニックちゃんのこと好きだよ」
「……」
「大好き」
「知ってる」
「そっか」
「ばかな女だ」
「へへへ」
「あのね。私確かにあの人のことすっごく好きで、恋をしていて、っていうかあの人以外の事がだいっきらいだった。昔は。だって私がいくらがんばっていても誰も気づいてくれなかったから。気づかないどころか私ががんばるほど私の居場所がなくなっていった。だから辛くて、みんな嫌いだって。でも、あの人は、あの人はね、私より理不尽に、顔が恐いからなんてはじかれたことだっていっぱいあるのに、ちゃんとほかに好きなものがたくさんあるの。なんか、うまくいえないけど、世界のことが好きな人なの」
「長い。わけがわからん」
「うんごめん」
「つまり?」
「一緒にいてもうまくいかなかった」
「……そんなことはないだろう」
「わかるよ。だって私ソニックちゃんに連れてかれる前、初めてあの人と喧嘩した」
「初耳だ」
「うん、言えなかった。あの人一人が無事ならほかの事なんてどうでもいいなんて言っちゃって、そしたらあの人、すごい剣幕で怒るんだよね。頭冷やせって置いてかれて、心まで怪人になっちゃうって思った。あの人に嫌われたら」
「そんなにか」
「私の世界は本当にあの人だけだったもん。自分以外の全部に嫉妬もしたし、死ぬほど悲しかった。だからあの時ソニックちゃんが誘拐してくれて世界が広がったんだよ。案外居てもいい場所あってすごくほっとした」
「……」
「でもずっと一緒にいたらね、私どんどんあの人だけになって、あの人はそれがいやになって、最後はダメになっちゃったんだと思う。ダメになったら私は全部怪人になったろうし、きっと。それはすごくいやな終わりだって思うよ」
「……」
「あの頃の私はいじけたいやなガキだったの。ソニックちゃんが変えてくれたんだよ。私があの人のことずっと、単純に好きで居続けられたのはソニックちゃんのおかげなの。だから、気にしないでね」
「元よりなにも気になどしてない」
「そっか」
一撃