りんこが半分眠りかけているとき、
「おい」
眠いまぶたはそのままにしている。目なんかあけなくたって、背中をふんづけているのが誰かなんてすぐにわかった。
だって入ってくるとき音がしなかったから。
だって乱暴なのに優しい声をしているから。
「こたつで寝るなと何回言ったらわかるんだ」
返事をしたいけれど口を開くのも億劫だった。だるい首肯で返すと、わざとらしいでっかいため息を貰う。
「風邪を引くぞ」
でも眠いんだもん。
コタツ布団に思いっきりくるまって、背中蹴られるのも覚悟で
「……いいもん」
呟いたつもりがほとんど声にならなかった。のどが乾いた。なんかちょっとだるい。
またもでっかいため息。
背後から気配が遠ざかる。
呆れさせちゃったかな。
ごめんねソニックちゃん。
帰らないで欲しいのにどうにも身体を動かせない。眠気の沼に腰まではまっていてどうしようもなかった。
無性に寂しかった。
どれくらい時間が経ったのだろう。
意識が沈殿していてもわかる、ひょいとたやすく持ち上げられる感覚と、絶対にけがはしない雑さで布団へ放り投げられる感触。
冷たいに違いないと覚悟をしていたのに、温い。
あ、湯たんぽだこれ。
コタツの焼けるような熱さとは違って、じんわりぽかぽか来るのが気持ちいい。
のに、なんか寒い。
ソニックちゃんの手のひらが額に載った。見なくったってわかる、白くて細い指が冷たくて気持ちいい。
「馬鹿」
ようやく自分が風邪を引いていたことを自覚して、りんこはちょっと驚いたくせに妙に満足げに、嬉しそうに笑う。
馬鹿馬鹿言いながらずっとおでこに手を乗っけてくれているソニックちゃんは優しい。手が冷たい人は優しいっていうのが当たってるのかは知らないけど、ソニックちゃんは優しい。すごく。
眠い。
起きたらソニックちゃんになにかしてあげたいな、なんて思いながら、りんこは安堵感と睡魔に沈む。
一撃