アクタベ君は怖い。めちゃくちゃ怖い。
幼稚園のころから怖かった。水色スモッグに黄色いお帽子着た幼稚園児アクタベ君は、日本語じゃない変な本読んですげー邪悪に笑ってた。人の趣味に口出ししないけどさ。
学ランだった中学生の時は、私宛のラブレターを焼いた。学校では私が燃やしたという噂になってしまった。そんなわけがあるか。
大学生の時には町中で暴力を生業とするお兄さん方に「アクタベさんちわっす!」なんて挨拶をされていた。アクタベ君は無視してた。いや単に顔忘れてただけなのかも。
なのになんかずっとこっち着いてくる。そのときは四六時中殺気立ってる。超怖い。
超怖いのに交友関係は長々続いている。だって無視すると背中蹴ってくるんだもんマジクソ痛いからね。アクタベ君にはもっと人の痛みというものについて考えていただきたい。
短大を出てちっちゃい会社のお茶くみOLとして就職した私と、雑居ビルで私立探偵をやっているアクタベ君は、
……なんか色々あって同棲していた。
そう、確かに私は一度は就職した。したんだけど、今芥辺探偵事務所の助手という名の下僕、事務という名のパシリ、同居人という名の奴隷としてアクタベ君に毎日けっ飛ばされたりして毎日生きている。
どうしてこうなった。
「そろそろ結婚するか」
「え、やだ」
ぶたれた。なんなんだアクタベ君。
「アクタベ君」
返事をする気が欠片もない背中に向かって、
「アクタベ君って私のこと好きなの?」
アクタベ君がつんのめるという実にレアな失態を目の当たりにできたので、今日のところは、とりあえずは、いっか。
アクタベさん堕天使とか魔王とかでもおいしいから幼少期とかないかもしれんけどな。なんだかんだで人間なアクタベさんが一番うめえ。
よんアザ