▼サレ臣で少し若い話


 二十歳もそこそこ、酒の飲み方も初心者マークなら事故を起こしても不思議はない。
 いきなり喋らなくなったかと思ったら、雉島はいすに座った体制で実に器用に眠っていた。

「あー……」

 こちらもそこそこ座った目で友人のつむじをジッと見て、伝票を手に席を立った。
 まあ、そういうこともある。





 特になんの気ないつもりで背負った雉島の体はぽかぽかと温かく、筋肉量がいかにも少ない柔らかな感触で、当たり前に異性で、正直に言うとたまらない気持ちになった。

 ため息。
 ことさら怒ったような顔をしているのは照れやら緊張やら、あるいは狼やらを押さえ込むためというのもある。

「からすまくん?」
「雉島起きた」のか。
「烏間君、烏間君、からすま、くん」

 ぎゅうと抱きつかれた背中が熱い。
 口が渇く。のどが鳴る。
 勘違いをしそうになる、熱のこもった連呼だった。

 だが雉島が選んだのは俺じゃない。

「離せ、雉島」

 俺では、ないんだろう。
 背中でふるえる気配があった。

「……ごめん」

 泣き出しそうな声ひとつを残して、雉島が腕を離す。悲しげな声色に違和感を覚えたけれど、なんだか烏間はなにも言えない。
 少し離れた隙間に風が流れ込む。
 寒い。

暗殺

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