二十歳もそこそこ、酒の飲み方も初心者マークなら事故を起こしても不思議はない。
いきなり喋らなくなったかと思ったら、雉島はいすに座った体制で実に器用に眠っていた。
「あー……」
こちらもそこそこ座った目で友人のつむじをジッと見て、伝票を手に席を立った。
まあ、そういうこともある。
特になんの気ないつもりで背負った雉島の体はぽかぽかと温かく、筋肉量がいかにも少ない柔らかな感触で、当たり前に異性で、正直に言うとたまらない気持ちになった。
ため息。
ことさら怒ったような顔をしているのは照れやら緊張やら、あるいは狼やらを押さえ込むためというのもある。
「からすまくん?」
「雉島起きた」のか。
「烏間君、烏間君、からすま、くん」
ぎゅうと抱きつかれた背中が熱い。
口が渇く。のどが鳴る。
勘違いをしそうになる、熱のこもった連呼だった。
だが雉島が選んだのは俺じゃない。
「離せ、雉島」
俺では、ないんだろう。
背中でふるえる気配があった。
「……ごめん」
泣き出しそうな声ひとつを残して、雉島が腕を離す。悲しげな声色に違和感を覚えたけれど、なんだか烏間はなにも言えない。
少し離れた隙間に風が流れ込む。
寒い。
暗殺