君はたぶん気付いてない


君はたぶん気付いてない



※ギマ→レン♀?
※付き合ってないけど仲良し
※ちょろそうなレンブさん…のはず



悲しいことであるが、他人のことを完全に理解することは不可能である。人間というものは往々にして間違いというものを起こすものである。そういった間違いというものが積み重なって人は時に大きな対立を引き起こすものなのである。腹を割って話してみようだとかきれいごとを人は口にするのであるが、そんなものは不可能なのである。
人間が他人に対して飾りもしないありのままの自分というものを提示することなどありえない。どんなに仲が良い友人だと言っても全部をさらけ出している人間は存在しない。仮に私は全部だしてると言っている人間がいたとしたら、その人はかわいそうなことに自分で自分のことをわかっていない人間だ。人は醜いもの。それなのにその醜さを隠すこともせずに人付き合いなどできるわけがないのだ。どんな人間にも遠慮というものは存在するし、本音など口に出すことなどないのだ。
だからこそ、人は誤解されて本来の自分と全く違った人物像に作り上げられてしまうのだ。

「だからね、レンブ。私のことを危ないというのは君の誤解にすぎないのだよ」

わかる?と小さい子供に言い聞かせるように言ってみると仁王立ちをした彼女は綺麗な顔を不機嫌そうに歪ませた。

「お前は自分の行動を見直さないようだな。昨日だって起こしに行ったら部屋に知らない女と裸で寝ていたじゃないか。おまけにお前は記憶をなくしていてその女はどこの誰ともわからないとか言って怒らせてしこたま殴られていたじゃないか。それでなんでお前が危ないという私の認識が誤解になるのか説明してもらいたいものだ。」
「いや…それは。昨日のことは謝るからさ。それに相手はシキミにアイリスだよ?いくら私が節操なしだとしても子供は相手にしないさ。」
「お前なあ、アイリスは確かに私たちから見たら子供かもしれないが、もうすぐ二十歳だぞ?シキミに至ってはとうに二十歳も超えているんだぞ?子供ってなあ…」

はあ、とレンブは呆れきったようにため息を吐き、自らの手で驚くほど短く切った(むしろ刈り上げたと言っても過言ではない)髪を触った。
元々、彼女のそのくすみのない美しい金の髪は肩につくほどの長さであり、彼女はいつもそれを一つに結わえていたのであるが、ある時邪魔だからという理由だけでその綺麗な長い髪を自らの手で乱雑に切り落とし、バリカンで自らの髪を剃り上げるという凶行に及び、今ではその美しくきれいにされていた様子が見れぬほど短く切られた髪になったというわけである。私としては、その短い髪もありと言えばありである。ただ、あのさらさらの髪を触れなくなるのは少し残念なところである。ちなみに、その凶行はアデクさんが留守の隙に行われ、帰ってきたアデクさんは腰を抜かすほど驚き、そして泣いたのであった。というのも、そもそも彼女に髪の毛を伸ばすように(というより女らしくしたらどうだという話を)言ったのはアデクさんであり、彼は何よりも彼女の女性らしさの象徴であるその髪を気に入っていたのである。

まあ、私は彼女の髪の毛が短くなったくらいで彼女の女性的魅力というものが損なわれるわけではない。彼女の褐色の肌はなめらかで、筋肉質ではあるが、そのごつさが全く出ておらず、均等のとれた美しい肉体をしている。いつも体を動かしている彼女は妙に(格闘家の女性全般に言えるのかもしれない)薄着で、私にとっては目に毒である。私に対してけしからんなどと言っている割に彼女の方も結構けしからんのだ。
その上、服装だけでもけしからんのに彼女はその胸にぶら下げたけったいな代物はますますけしからんのだ。

女であるというのをことさら強調するようにぶら下がっているメロン大のそれはぴったりと肌に張り付くような薄着をよく着用するためにことさら強調され、目に毒どころの騒ぎではない。気付けばそこに目が行く。私だって男だ。仕方ない。
だから彼女ほあ私と話す時はいつも眉間にしわを寄せている。それでもその顔すら美しいと思ってしまう私は末期で救えないのである。アデクさんはとんでもない化け物(魔性の女)を生み出してしまったのである。なんてことであろうか。
そして本人が自分の魅力に全くの無自覚というところがさらにズルい。
なんで私がこうして脳内で彼女の魅力をとつとつと語っているのかわかるかい?認めたくないのだ。
百戦錬磨の私が色恋など毛ほども興味がないという女性に恋をしてその上、もてあそばれているなど断じて認めたくないのだ。
たわむれに愛をささやいてみても怪訝な顔をされ、デートに誘ってもそもそもデートだと思われない。君の中の私はどういう位置づけなんだと聞いてみれば、真顔で危ない人と即答された。どういうことだ。

「あー、レンブ。君はなんで私のことをそんな危ない人間に認定してるんだい?私何か問題でも起こした?」
「いつも起こしているだろうが。」
「そりゃ、外で酔っぱらってなんやかんやとしてしまいますけども。リーグ内ではそんなことした記憶ないんだけど」
「しかたない。お前はケダモノだからな。」
「意味わかって使ってる?」
「ああ。馬鹿にしてるのか?男はみんなケダモノだ」
「アデクさんだって男じゃないか」
「師匠はもう枯れてる。」

何気にアデクさんにひどいことを言ってレンブは満足したのかふんと鼻を鳴らした。私としてはどうしてもケダモノという間違い切ったレッテルをはがさなくてはならないという使命感に燃えて手にしていたグラスからもう何杯目になるのか記憶にないワインを飲み干す。なんでそんな使命感に燃えるかって?話聞いてなかったのか?私はレンブが好きなのだ。
ああ、さっきまで認めたくないとかさんざん言っていたが、もういい。ああ、認めるよ。認めてやるよ。

「ああ、仕方ない。認める。」
「うん?」
「レンブ。私は君のことが好きみたいだ」

実は私も…なんて展開にはもちろんなることはなく、レンブは私の渾身の告白を受けて、またあきれ返った顔をしてこの程度でもう酔っぱらったのかとつぶやいた。

「ギーマ。お前、カトレアたちの部屋には行くなよ」
「行かないよ。どんだけ信用ないんだよ。」
「日ごろの行いを思い返せ」
「あー、はいはい。そこまで言うなら君が私のことを見張ってなよ」

たわむれにそう口にすれば、なにがしか考えた後、レンブはそうだなと言って近くのソファに腰かけた。

「ギーマ、お前。私のこと好きなんだろ?だったら、浮気するなよ」

なんで君そんなに男前なんだよと言いながらも、これも無自覚なんだろうなと残念に思うのだった。


《君はたぶん気付いてない》

(ま、いいんだけどね)







こちらも月飛びのミスミ様宅の四周年フリー企画のものを……頂きすぎかと思ったのですがちゃんと許可いただいて恐縮しながら頂戴してきました。
鈍い!惜しい!でもだからこそ美味しい!本当に有り難うございました!!


14/12/30





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