それが愛だと言うのなら


ギマレン



※ギマ←レンに見えるギマ→→→←レン
※周囲からはできていると思われてるけど実はできてない感じなギマレン



「人は軽々しく愛しているという言葉を使いすぎている。」

そんなのあり得ない、とその愛しているという言葉を軽々しく使いすぎている代表格のような格好をした男がべろんべろんに酔っぱらいながらもはや回っていない舌で懸命にそう主張した。

「愛なんて滅多なことで使っちゃいけないんだよ」
「お前だって言うじゃないか」
「バカだな、レンブは。おれがいってるのは好きという言葉だ」
「おなじだろ。」
「全然違うよ」

ぜんぜーんちがうんだよーと完全に呂律が回っていない酔っぱらいの体でギーマは空っぽになったワイン瓶を振り回しながらそう主張した。私はそれに対してはいはいと返答しながら、奴をどう部屋まで運ぼうかと算段をつけていた。

「れんぶ、きいてるの?」
「聞いてる聞いてる」
「うっそだー」
「嘘じゃない聞いてるさ」
「ほんとお?」
「ああ本当だ」

抱え上げて部屋まで運んだとしても奴の部屋には鍵がかかっているだろうから、この状態の奴から鍵を受け取るのは容易ではない。だとしたら、もはやこのまま私のベッドに寝かせてしまった方がいいのかもしれない。そんなことを考えながら、ギーマのよくわからない言葉に適当に相槌を打ちながら彼の細身の体を抱き上げる。意外にもずっしりくる重みに奴が意外にも上背のある男であったことを思い出した。いつもいつもちょっと殴ったら折れてしまいそうだと失礼なことを思っているのであるが、これなら少しくらい乱暴にしてもちょっとでは折れないのかもしれないとこれまた失礼なことを考えた。

「ねえ、レンブ」
「なんだ?」
「あいしてる」
「は?」

言われた言葉がよく理解できなかったので、驚いて思わず奴を床に落としてしまった。どしゃりと嫌な音を立てて落ちた奴はぶつけたらしい額を擦りながら、呂律の回らない口調でぶちぶちと文句を私に対して口にした。
いたいよー、とかなんとか言っているのは聞こえるのであるがそれらに対して返答することはできなかった。

こいつは今なんていった?

その問いかけが私の頭の中で渦巻く。驚きというよりは怒りに似た感情であった。
あれだけ軽々しく愛の言葉をささやくもんじゃないとか言いながら何故こうも簡単に私に対して冗談めかして言ってしまうのか理解不能である。酔っぱらいの戯言だとしてもひどすぎる。
酷いと叫んでみてもどう考えても私の八つ当たりにしかならなそうなので、ぐっと拳を握りしめることで耐え、唇を引き結んでまだうだうだと何か言い続ける奴を丁寧さの欠片もない手つきで持ち上げて、部屋のベッドに投げ込んだ。
奴は顔からベッドに入り、うぶっという変な声を出した後、ごろりと体勢を立て直してから気の抜けた声で俺にお礼を言ったあと、またしても奴が軽々しく言ってはいけないという言葉を繰り返した。

「あいしてるよ」
「そういうのは、好きな奴に言え。軽々しく口にするもんではないんだろ!」

叫ぶように口にして足早に立ち去る。後ろから追いかけてくる存外はっきりした奴の言葉はとりあえず聞かないふりをした。


「あってるさ。きみが好きだからね」



《それが愛だというのなら》

(好きな人にはいくらでも言っていいものだろ?)

*

ズミガン?

 

※「助けてなんか〜」の続き
※ズミさんはまたしても不在
※ガンピ+カルネ
※ガンピさんのカルネさんに対する感情は娘に対するもの
※カルネさんのキャラが違う



更年期障害をあろうことか患っていると知って早一か月。
自分で調べたり、医者にかかってみて諸々の処置はしたのであるが、なぜか一向にそれらが改善する気配というものはない。
一度相談してもらったパキラ殿にもう一度相談してみようかと思うが、彼女は忙しそうだ。一度相談した内容をまた相談するには治療しても治らないんだけどという内容ではちと弱い気がする。かといってこの現象を放っておくわけにもいかない。日常生活にも支障をきたし始めているそれはどうにかして直す他ならない。
ともすれば、どうすればいいのであろうかと考えて一人唸る。
美味しい紅茶を入れてくれたズミ殿は料理人の研修会(我にはよくわからないが大層すごいものらしい)に参加するために早々にいなくなってしまったので、更年期障害のことについて相談することはできない。というより、ズミ殿をみて動悸が激しくなるということを本人に伝えてもいいものか些か疑問だったので、彼には何も言っていない。別に更年期障害を患っているおじさんだと思われたくないわけではない。たぶん。
三十をとうに過ぎ去った己がまだ若いなどとは微塵も思ってはいないが、おじさんと言われる年齢になったかと言われれば微妙なところだと思いたい。人間の寿命が医療の進歩と共に格段に伸びた昨今、四十ちょっとという年齢は人生の終わりを百と仮定すれば半分も来ていないのだ。そんな半分も来ていないのにおじさんだなどと言われたくはない。
ただ、こんな話をしたら、それこそ逆にその発想がおじさんなんだと言われそうでまだ誰にも言っていない。

「はあああああああ」

大きなため息を吐くとチャンピオンが心配したようにどうしたの?と問いかけてくれた。女優を副業としているだけあってぱっちりと大きくて綺麗な瞳に心配の色を浮かばせた彼女はうなだれる我に対して覗き込むように様子をうかがってくれた。
その様子に何か返さなくてはならないと思いながら、本当のことを言ってもいいのかわからずにごにょごにょと少し誤魔化す。

「その、なんというか…最近少し調子が悪くて」
「大丈夫なの?」
「う、うむ…」

本当は更年期障害なんだけどと心の中で付け足す。はっきりしない我の様子に彼女がまた心配そうに顔を覗き込んでくる。それが嘘を吐いているようで心苦しくて、恥ずかしいが結局更年期障害のことを告白する。

「いや、実は…更年期障害らしくて、それが中々改善しなくて困っていて。」
「そうなの?お医者さん紹介しようか?」
「いや、医者には掛かっているのだが、更年期障害の治療というものをしても改善がみられないからな。」
「うーん。私そういう専門的なことには詳しくないんだけど、更年期障害だと思っていたのに別の病気だったということがよくあるみたいよ?」
「やや!それは大変だ。でも症状は更年期障害のものだからな。」
「そうなの?」
「うむ。息苦しくなったり、ドキドキしたり、寝不足になったりとか、調べたら更年期障害の症状そのものだったのだ。」
「そうなの…。いつもそうなの?きっかけとかがあると別の病気の可能性もあるわよ?運動した後とか、何かの発表があるとかで緊張しているとか。ストレスでそうなることもあるらしいし…。動機とか息切れという症状がおんなじでも一概に更年期障害って言い切れないわ。」
「うむ…。それなら、確か、ズミ殿を見たときに起こっているな」

ぽつりと思い出すように言ってみると、彼女はすごく心配そうだった表情を一瞬で消して、きょとんと目を丸くしてから、なあんだと言ってから爆笑した。心底安心して笑い転げる様子に首を傾げることしかできない。何がそんなに面白いのかさっぱりである。

「か、カルネ殿?」
「ご、ごめんなさいね。でも面白くて。」
「面白い?」
「うん。ガンピさん、勘違いしてるんだもの。」

さぞ面白いというようにくすくす笑っているチャンピオンの様子に首を傾げると彼女はにっこりとやはり顔が整っているからなのか綺麗な笑みを浮かべながら、それは更年期障害なんかじゃないわと言った。

「更年期障害の症状以外の何物でもなさそうだが?」
「違うわよ。そういうのとは。だってズミさんがいないとそういう症状起こらないんでしょう?」
「そうであるが?」

だからなんだと首を傾げると彼女はうーんと悩むように顎に手を当てながら言った。

「ガンピさんは今までに人を好きになったことはないの?」

ニコリと微笑んでどう?と聞かれたそれに、「好きな人…」とぽつりとつぶやいて考え込む。その時なぜか一番初めにズミ殿の顔が浮かんで消えた。

「ないわけではないが…」

別に、と騎士らしくもなくはっきりしない返答に対して、チャンピオンはやはり微笑んだままその時の感情を思い出してほしいのと言った。言われるままに思い出してみると彼女はキラキラと眩しいまでの笑みでねえと本当にうれしそうに言った。その反応が自分の発見したことを聞いてほしい子供のそれに似ていてほんわかと心が温かくなった。だが、その暖かい感情は彼女が放った一言によってすぐさま驚きに変化した。

「その時の感情って、今回の症状と似てないかしら?」

好きになった人を思いドキドキして、その人を妙に意識して頬が熱くなる。好きな人と話す時に緊張するから汗をかくし、その人のことを考えると寝れなくなるし、息苦しくもなる。
動悸、発熱、発汗、不眠、息切れ…見事に更年期障害だとばかり思っていた己の症状そのものである。いやでもまさかと思いつつ、油をさし忘れたブリキのような音を立てながら自分の発見を聞いてもらえて満足そうな彼女を見やる。

「つ、つまるところ?」
「ガンピさんはズミさんが好きなのよ!」
「え?」
「だって、ガンピさんはズミさんを見てそう感じてたんでしょ?」

さも当たり前のことのようにそう言う彼女を見て、え?え?と思考が追いつかない。確かに更年期障害だと思われる症状はズミ殿を見たときに発生していた。むしろ、彼を見ていないときは発生していないといってもいいのかもしれない。
ん?いやいやまさか。そんなわけないと否定してみるが、否定の材料を集めれば集めるほど否定するのが苦しくなっていく。
まさかまさか、そんな、と結局はそこにたどり着く。

「え?我はズミ殿のこと好きだったの?」

青ざめながらその思い至ってはいけない答えというものにたどり着いて、思わず彼女を見る。彼女は絶対そうよと興奮したように頬を染め、キラキラと瞳を輝かせながら確信したように言う。その反応をやはり可愛いなあとぼんやり思いながら、自分を納得させながら立ち上がる。

「そうか。我はズミ殿が好きだったのだな!カルネ殿、相談に乗ってくれてありがとう。」
「いいの。解決してよかった!」

やはり天使のような笑顔を浮かべた彼女は次の仕事があるからと立ち上がった。我はそれを見送りながらとりあえず、この紅茶を飲み終わったらパキラ殿に相談に行こうと思いながら冷めても美味しい紅茶を飲むのだった。


《それが愛だというのなら》

(パキラ殿、更年期障害ではなく恋であった!)





こちらもフリーとの事で頂いてきました!ミスミ様有り難うございます!!





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