芳しきや夜の香よ(ミスミソウ様へ5000HIT)


今日和、始めましての方は失礼致しました。私、イッシュポケモンリーグ四天王の一人、シキミと申します。ゴーストタイプの使い手で、挑戦者の方々のお相手をさせていただいてます。あ、後私小説家希望と言うか小説家になりたくてでもポケモンとも一緒にいたいと言うか、バトルを通じても人とも触れ合いたくてこの仕事をしてるんですよ!

あ、自己紹介が過ぎましたね。今はそんな場合じゃなかったのにあたしったらまた話を違う方向に膨らませちゃって…ってまたずれてる!今はそうじゃないんです!
今、あたし大ピンチです。主にあたしの頭の中が大ピンチです、そしてそして

職場の同僚の仲が大ピンチなんです!

「ギーマ、この前の書類どうした?」
「あ…あー、忘れてた」
「………締め切りは今日の」
「解ってる!解ってるから言わないでくれる?やばいな、全然目ぇ通してないよ」
「自業自得だろ?」
「えー、君に其処まで言われる筋合いないな〜」
これですよ!あたしこの職場も同僚も大好きでみんなで仲良くしたいって思うし考えてるんですけど、なんでかこの二人いっつもこうなんですよ!?何でですかもう!
「もー、二人とも相変わらず仲悪いんだから。もう少し仲良くやりましょうよー、折角アデクさんも帰ってきてリーグのメンバー揃ったのに!」
「やだよ、なんでこんなガチムキのハゲの男と仲良くしなきゃいけないのさシキミ」
「その言葉そっくりお返ししてやるわ!後俺はハゲじゃない、坊主だ!こっちこそこんな変な髪形の奴とはお断りだ」
「人のお洒落に口出ししないでくれる?」
「お前もな」
「だーかーらー、それが仲悪いって言ってるんですよ!二人とも一緒に仕事してから結構時間経ってるのに!!あーも〜、カトレアちゃんもなんとか言って下さいよ〜」
「…………」
シキミの訴えに、ふぅ、と小さく吐息のような溜息を吐いたカトレアはやおら椅子から浮き上がるように音も無く立ち上がり、すすすす…とこれまた足音も立てずに近付いてきた……寧ろ浮いていた。え?お前日常から浮いてたの?持ち場でだけ発揮してるかと思ったけれど?
ふよふよふよ、とまるで不思議な効果音でも発せられてるんじゃないかと言う程にふわふわしながらレンブとギーマの前に浮かぶカトレアは二人の顔を、何も言わずに唯じっと眺めた。

その暫しの間と無音に、先に耐え切れなくなったのはギーマとレンブの方だった。

「…何?」
「カトレア?」
「……じゃれあうのは かまわないけれど、あまりシキミをこまらせるのは 関心しないわね…紳士じゃないわ」
「じゃれっ」
「おいおい、レディの目は少し他所を向いてるんじゃないのかな?」
「……………よそで、おやりなさいな?そういう、なんていうのかしら…プレイ?っていうの?しらじらしいと…おもいましてよ?」
「プップレイって!?カトレア?」
「ちょ、っちょ、カトレア君何を…」
カトレアの口から飛び出した、カトレアらしからぬ発言に二人が動揺している間にカトレアはまた音も立てずに、宙を滑る様にシキミのところへ移動すると漸く地面に足をつけた。
「あれで…しばらくは大人しくなるはずだから」
「カトレアちゃん、何言ったんですか?」
と聞いてくるシキミには答えず、カトレアは溜息混じりに
「むいしきとむじかく、そこからの作意が……いちばんめんどう ですわ」
と、全てを物語る一言を零した。しかし、シキミは思いの外純情で天然だったようでカトレアは更に溜息と欠伸を一つ零したのだった。

「へ?何の話ですか?」
「……ときどきあなたが おさなく、あいらしくみえてよ?シキミ」

*

「ねぇレンブ、さっきのカトレアの話どう思う?」
「もしやばれたのか?カトレアは勘が鋭いからな」
「思いたくないけど、実に不本意だけれどその可能性が凄く高い」
「…やはり態とらしかったんだろうか?」
「う〜ん、そういう事でもないと思うんだけどー、どうしようかー?下手したらシキミにもバレちゃうし」
通路の奥、隅の方でしゃがみ込み頭を突き合わせ、ひそひそと話し合う二人は、別段不仲に見えない。寧ろ仲が良さそう。
傍目にはごつくて恐いのとインテリ系の怖いのが何か悪事を相談し合っているようにも見えなくもないが、それでも日頃の様子とは180度違う二人の態度に残念ながら気付く人は誰もいない。よく言えば閑散とした、悪く言えば鄙びたリーグの夕暮れ…今日もイッシュポケモンリーグは平和だ。主に挑戦者が少ないと言う理由で。
そんな二人の背後から聞き馴染んだ、よく響き通る声が二人にかけられた。

「お、いたいた。おーいレンブー、ギーマー」
「師匠」
「アデクさん」
「こんな所に居ったのかお主等、相変わらずの仲じゃの〜もうち〜っと仲良く出来んか?」
アデクに声をかけられ、二人はさっと立ち上がった。大方、アデクから見た二人は便所座りでガン飛ばしあって威嚇中、といった所だろう。先程の仲よさげな雰囲気は何処へやら、レンブとギーマは瞬時に
「今の儘で十分ですが?」
「これ以上何をしろと言うんですアデクさん?」
と険悪ムードへとシフトする。この二人、よく解らないが役者である。

「お互いの何が気に喰わんのじゃお主等?」
とアデクが問えば何が気に喰わないって?!と一言一句、タイミングも違わず言い返してくる。そんな二人の息がぴったりで仲が良さそうだとは言えず、アデクは顎を撫でながらさて、二人の主張を聞いてやるかとゆったりと構えていたのに

「こいつが俺を綺麗と主張して譲らないんです!」
「彼が私の方が美しいと主張して譲らないんだ!」
なんて、とんでも発言をかましてくれた二人にその余裕はあっと言う間に何処かへ消え去ってしまった。

「は?」
とぼけた様な、本当に意味が解らずに尋ねているのか、そんな声音で単語一つ、疑問符一つを吐き出したアデクに二人は我先にと話を繰り出し始めた。
「俺が綺麗な訳ないじゃないですか、そもそも綺麗と言う言葉はギーマに使うのが正しいと思うんです!」
「確かに私はそれなりに整った造形をしてるかもしれないけれどね、そんな見た目だけの美しさの事を論じている訳じゃないんだよ私は!」
「は?え?お主等何を言い始めとるんじゃ?」
「ギーマは女性よりも色白だし、髪は闇夜みたいな黒く深く澄んだ色で、目の色だって綺麗で仕方の無い青で何時もギーマの全てにうっとりしているくらいなのに。それに比べ俺は肌は浅黒い人種だし目だって変哲も無い色だし髪の色だって綺麗なブロンドと言う訳でもない。こんな俺の何処が綺麗だというんでしょうか師匠!?」
「いやレンブ、美的感覚と言うのは個人差と言うか個人個人で差が生じるのは当たり前と言うか」
等とアデクが一般論に逃げこの場を収めようとするが、そうは問屋基い弟子と部下が許す訳が無い。
「何を通り一遍等な事を言ってるんですかアデクさん。レンブ、君程美しい人は嘗て私の前に現れた事は無かったよ?何の変哲も無い髪の色とか自分で言ってるけれど、その君に髪が日の光に透けると、きらきらとまるで宝石みたいに燐を放つんだよ!瞳の色だってよくよく見なくても何とも形容しがたいブルーグレイじゃないか、それ程綺麗な瞳を持っていながら美しくないだなんて、何たる謙遜なんだい?そして無駄なく鍛え上げられた体も君の美しさの一部だし、何より君の精神や心根が他と比べられない程に美しい!君はその美しさと高潔さをもっと誇るべきだよ!」
「ほら聞きましたか師匠、この世迷いっぷりを!そしてこの買い被りっぷりを!」
「ふげ?」
「アデクさん、このレンブの鈍さどうしてくれるんですか?アンタ彼の師匠なんでしょ?全く以って伝えたい事も伝わらないこの歯痒さったら!」
それも愉しみの一つですけれど!と言い放つ部下の強かさに呆れ半分関心半分で、はぁ〜としか返事の出来ないアデクは着いていけない話の内容を、どうにかこうにか頭の中でまとめるのに必死で、上の空でもある。

えっと…つまり、レンブとギーマの仲が相変わらず悪くて?その理由を聞いたらお互いの主張が食い違うどころか同じ主張をお互いにぶつけてるだけで?いや、食い違ってはいるが内容は同じものだけれど…何々だ、レンブはギーマが綺麗だと主張して、ギーマはレンブの方が綺麗だと主張してそれで仲が悪い儘だと二人は言いたいのか?
何じゃそら?!仲良しの子供がお互いの事をどれだけ知ってて好き合ってるかを言い合ってる、かのような微笑ましい光景に非常によく似ていると考えたいが、それを披露しているのはいたいけでも頑是無い子供でもない。30過ぎたおっさんと30になったところのおっさんなのだ。その様な例え話と比較して検証したい等とは、理性の何処かが拒み激しく抵抗している所為か結びつこうとしない。待って、待ってくれ我が弟子よ、我が部下であり友人でもある男よ。
柔軟な思考を、時の流れを受け容れるのも強さの一つではあるが如何せん今、目の前の状況はその強さや今迄の経験で培ってきた度量や余裕の遥か彼方の別次元の問題であってじゃな、寧ろそんなの全くの畑違いじゃから…
等などそんなアデクの他方向に広がっていく逡巡なぞ、二人は全くお構い無しな訳で…

「後ですね師匠」
「…なんじゃ?」
他に言う事があるのか?こちらの都合なぞお構い無しのレンブに、アデクはおいおい、と思ったがそれでも弟子の前だからと努めて平静を保ちレンブの言葉を待った。
だが、その余裕とも取れる油断がアデク自身の首を絞めに掛かい襲ってきた。

「ギーマの方が俺よりカッコいいって言ってるのに!」
「レンブの方がカッコいいに決まってると言ってるのに!」
「はぁあ?おい!さっきの続きかレンブ、そしてその尻馬に乗るなギーマ、お主態とじゃろ!?」
頭の中で思うだけに留めるつもりだった言葉が到頭アデクの口から零れだした。話を泥沼に落とし込まぬよう先を見通し、二人の言い分をただ黙って聞き、よく考え、自分の問いで以って二人を同僚として若しくは友人として正しくより良い形で導くつもりだったのに…逆に儂が二人のペースに飲まれ巻き込まれているだけの様に思えるんじゃがのぅ、と流石にこれは口に出さずに済んだアデクは胸を撫で下ろしていた。のだが、師匠、上司の声も言葉も二人は無視してヒートアップしていってるようだ。

「確かに私もそれなりに男らしいと言うかもしれないけれど、カッコいいという言葉はレンブに使うべき言葉じゃないのかな?だって如何考えたって君はイケメンじゃないか」
「お前の目は節穴か?お前よりカッコいい男が何処に居るんだギーマ!」
「私の目の前に居るじゃないか、レンブ!君だよ!君程の男を漢前と言わずしてなんと言うのかい?!」
「俺の何処が漢前だと言うんだ!俺はまだまだ未熟者なんだ、お前の様に洗練された身のこなしも人生の経験も場数も積んじゃないのに此れの何処を取って男前といえるんだ!」
「先ほども言ったように、私が君の美点としてあげているのは外見上のものではないんだよ?君のその気高く何よりも美しい精神の在り方とその在り所としての君の存在と生き方が格好良いと言ってるんだ!!」
「まさしく買い被りもいい所だ!お前よりも生きていない人間の、何処を見てその様な判断に至ったんだ!」
「今迄の期間、君との付き合いを経て出た結論だよ。買い被りでもなんでもない、君の資質込みで私はそう考えているんだ。後君は可愛い!どうにもなら無い程可愛いんだ!!」
何か今、凄い発言出たぞ?凄いの来たぞ?!そう思った時、アデクは既に発言を繰り出していた。

「可愛い?!おいギーマ、それはどう言う事じゃ!」
「どうもこうも、言葉の儘ですよ。それ以外何の意味があるんですか?」
何の意味があるとかは、逆に儂が聞きたい…逆にじゃない、儂が聞く事なんじゃないのかのギーマ?なんでそんな鬼の首を獲ったような顔して儂を見てるの?こいつ解らないの?有り得ねーみたいな顔して何で儂を見上げるの?儂首突っ込まないほうよかった?
少し悲しい気分にもなりながらギーマとレンブから視線を離さないでいれば、あからさまな程に肩を竦め頭を左右に振るレンブが先程よりは落ち着きを取り戻したふうに、呆れたようにギーマを問い質した。流石我が弟子、ヒートアップする時はかなり後先考えないが、妙なところで冷めツッコミをし始める。いいぞレンブ、流れを変えてくれ、頼む!

「本当にどうしようもない男だなお前は!俺の何所が可愛げがあるように見えるんだ?」
「其処にも気付いていない!なんて鈍さだ、なんて都合のいい風に育ってるんだい?!益々君の可愛さを主張しても、私は間違いじゃない事になるだろう?」
「お前のその考えを此処いらで切り替えさせてやる、ギーマの方が余程可愛いところがあって、更に格好も良く男前だと言っているのに何故解らん!!」
「その君の意見、此処で切り払わせてもらおうか!私よりもレンブの方が男ぶりがよくて男らしいし、更に可愛い所だって沢山あって堪らないんだと言ってるのに何故伝わないのかな?!」
「お前がいくら言葉を挙げ連ねても、伝わらんものは伝わらん!」
「流石頑固で意固地だ、だが、その態度すら私には可愛い仕種の一つにしか見えないんだよレンブ。これから具体的に述べてあげよう、君の可愛いところを一つ一つね!」

自分の師匠が変な期待を自分にしているとはレンブは露ほども知らないが、アデクの願いは最悪な形で裏切られた。否、相手が悪かったのだろうか…兎に角、何だか見たくも無い惚気を聞かされているような流れにも感じられ、アデクはごっそりと気力が奪われている気がし始めた。寧ろ元気なくなってきた。
本当にこいつ等仲悪いの?寧ろ逆なんじゃなかろうか?本当は凄く仲がよくて、それを誤魔化す為に仲の悪い振りをしてるんじゃなかろうか?レンブは不器用ではないし、ギーマに至ってはそこいらの三流の役者よりも余程芸達者で口八丁手八丁、己の全てを駆使して相手を自分のペースに引き込み丸め込み悪く言えば騙すんじゃから不可能では…?
あら?可笑しいのう。何故隠さねばならんのじゃ?別に仲良くて悪い事なんか無いのではないのか?なんじゃ?何か疚しい事でも二人にはあるのかの?
「師匠!」
「アデクさん!」
「え、は、はい!」
思考中に差し込まれた二人の声に咄嗟に反応したアデクは何故か丁寧な返事をして二人の顔を見た。二人は何時の間にかアデクの眼前まで迫ってきており、若干及び腰のアデクに
「如何したら伝わりますかこいつに!?」
「如何したら彼に伝わりますかねぇ?!」
とほぼ同じ質問を投げかけた。

「え?え?はい?」
「ですからギーマに、ギーマの方が俺より美形で格好がよくて男前で…」
「だからレンブに、レンブの方が私より美しくてカッコよくて男前で…」
「待て、待ってくれんかレンブ!ギーマ!儂にちゃんと1から説明を…」
お爺ちゃん発想力が追いつかないから!順を追って説明してくれないと…寧ろ説明しろ!一体お主等は何故そんな面倒な工作をしておるんじゃ?何時からどんな仲になっとるんじゃ!?……もしやそれはアレなのか?もしかしてもしかすると…な関係なのか??とアデクが問い詰めようとした時、
「っさてレンブ、もうこんな時間だ。終業の準備に取り掛からなくちゃね!」
「ああ!もうこんな時間だ、では師匠。師匠も持ち場の掃除はじめて下さいね、少ししたら誰かが手伝いにいくんで」
すわっ!と、まるで藪から出てきた野性のポケモンが逃げ出すよりも速く、ギーマとレンブはアデクの前から姿を消した。棒読みの台詞を置き去りにして…
「こらー、ちゃんと説明せい!二人共儂は、儂は認めんぞー!!」
何か知らんが、兎に角認めないんだからなー!と走り去る後ろ姿に一頻り叫びつけたアデクは肩で息を吐いた。久し振りに叫び疲れたわ…しかしはてさて、面倒な性分ながらも真面目で一途な愛弟子と自らカジノに赴いて迄勧誘した部下が己の居ない間に何を如何していたのか、知りたいやら知りたくないやら……

「儂、もう少しちゃんとリーグに常駐しようかな?」
今更当たり前の事を口に出したアデクは、それでも弟子の言う事を聞いて持ち場の掃除をしに戻るのであった。手伝いに来てくれるだろう誰かに、是非二人の話を聞く為に……

*

「危なかった…さっきのカトレアので動揺していたんだ、」
「こっちもそうみたい、アデクさんに追い打ちをかけられた気分になってついうっかり出てしまったよ」
持ち場の消灯確認をしながら、またひそひそと二人は内緒話をしている。しかも今度は職員も挑戦者も歩く通路だ、何故数年もの間バレなかったのが不思議な程周りに考慮していない内緒話だが、それも職員も少なければ挑戦者も多いとは言えない、常日頃閑散としたチャンピオンリーグと言う職場のなせる業だったりする。
「それにしても」
「うん?」
「今日も何故か周りに伝わらなかったな」
とお互いの持ち場やシキミ達の持ち場の消灯確認や非常口、通用口の戸締りの確認をしがてら話を続けるレンブとギーマの会話は若干二人にしか解り辛い内容を孕み、訥々と進められて行く。

「何故だろうね、言語表現の壁はやはり堆く、先が見えないものなのかな?」
「職場は職場、プライベートはプライベートだと言いたいだけなんだが…何で伝わらないんだろうな」
「全くだ、アデクさんにも全然伝わらなかった。なんて言えば解ってくれるのやら」
「馴れ馴れしい態度だと、プライベートのなにかにを疑われると思って昔の儘の間柄で仕事中過ごしているだけで、本当は別にお互い険悪じゃないし仕事仲間として信頼しあってると言いたいだけなんだが…何が足りないんだろうか?」
全てが間違えている、と誰かが二人に告げてやればさっさと進む話だ。だが、その誰かは何時も現れない。それもこの数年間のお決まりだ、何が悪いかと言われれば職場が悪い。

「でも何時までもこうやって険悪ムードで押し通せるとは限らないし…どうしようかレンブ?」
現にカトレアは気付きかけているし、アデクさんに至ってはこちらで自爆しかけた。いくらアデクさんでもアレだけ目の前でやられたら、弟子と部下の関係を疑問に思うだろうさ。
そう言ってやるとレンブは、少し考えながらも
「……俺は職場で恋人だと言う事をばらすつもりはない」
とお互いの関係が変化した時に告げた言葉を其の儘繰り返した。それに関して、ギーマは解りきっていたように
「だろうね」
としか返さず、はい確認終了〜と鍵をジャケットのポケットに押し込むと踵を返した。その後ろをややゆっくりと着いていきながらレンブはぽつり、と零す。

「お前は皆にばらしたいか?」
それに対しても、ギーマにとっては予想の範囲内だったのだろう、レンブに向き直しもせず歩調も緩めず何時も通りの語調で述べる。
「そりゃあ、皆の公認になれば最初の面倒さえ切り抜ければ楽だろうから、後の事を考えればその方が良いんじゃないかとは考えるよ?けど」
「けど?」
レンブが言葉尻を繰り返すと、やおらギーマは振り返りながら言葉を続け、紡ぐ。
その表情は何時も以上に人を食った、まさしく勝負事を嗜んでいる最中の顔そのもので、

「少しくらい秘密があった方が、人生は面白く豊かで、それでいてスリリングだ」
頭も鈍らなくていい、良い事尽くめじゃない?

なんて言ってのけて、悪巫座戯めかして笑みを作るギーマに嗚呼やっぱりお前は、と諦めにも似たでも不快ではない感情で
「全くお前は、根っからのギャンブラーだな」
とレンブはギーマを称した。その声には普段職場で放たれる負の感情は一切含まれていない、とても柔らかな響きだ。
「褒め言葉として受け取っとくよ、でもやっぱりもう少し歩み寄る雰囲気になった方がいいね、カトレアには屹度ばれてるから」
「ばれてると思うといちいち恥ずかしい…」
と俯いて顔を隠したレンブにちょっかいを出したくて堪らない気になったが、職場では駄目だ、とぐっと堪え早く帰ろうじゃない。と帰宅を促す。嗚呼その前にこの鍵を警備室においてこなきゃね

さて、次はどう言ったシチュエーションでこの関係を誤魔化そうか、腕が鳴るじゃないか

そんな私達がどちらかの家の玄関をくぐった瞬間、お互いの何かしらのスイッチがそれこそ電気をつける気軽さで切り替わり職場に居るレンブとギーマではなくなってしまう。と言うのはまた別の話だよ?言っただろ?少しの秘密があった方が人生は楽しいって。





ミスミソウ様のリクエストの、ギマレンで険悪に見せかけて実はラブラブ馬鹿っプルな二人。大変お待たせ致しました!かなり迷走してしまい殊更お時間を頂き申し訳ありませんでした、ギマレンと言いながら職場関係がかなりでばってるし何だしですが何か御座いましたらご遠慮なくどうぞ!



14/7/10





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