スターとアフロのプレゼン交流(モルナガ様へ5000HIT)


「あのさ、デンジよぉ」

今日はチャンピオンリーグが休みで、ナギサジムも点検の為休みになり午前中をジムの点検作業に費やしたデンジは、午後の一時をオーバに何言か小言を言われながらも溜まりに溜まった家の片付けに使っていた。そしてその片付けも一段落した頃、冒頭の言葉をオーバが机を挟んだ真正面から切り出してきたのだ。
「なんだよオーバ」
それに対し、日頃滅多にやらない家事や片付けに腐心した為か奇妙な疲労感から、何時もの数倍増し気怠い返事を返したデンジは繰り返されたオーバの言葉にまたやる気のない返事を返すだけだった。
「あのさ」
「おう」
それに対する言葉が、ある程度の破壊力を持ち、この先の可笑しい話の流れを生み出す事も知らずに…

「お前さ、俺の何処良くてさ、俺を―か、の じょ?つか、恋人にしようと思った訳?」
しかし、流石デンジは変わってるだけあってこの程度のオーバの風変わりな質問に対し一切戸惑わなかった。唯感情の儘にデンジは返答をする。
「は?んなもん可愛いからに決まってんだろ?」
「か、可愛い?!」
「おう、可愛いだろーがオーバさんは」
可愛いだろうが、俺のオーバさんが可愛くなくてなんなんだ。あ、チマリも可愛いしミカンちゃんだって可愛い。しかしそういった可愛さとオーバの可愛さは一線を画したところにあるのだ。何時かちゃんと説明してやろうと頭の隅で考えながら逆によ、とデンジはオーバに質問を投げかける。
「じゃあお前は何で俺の告白にオッケーしたんだよ?」
さて何と答えるやらと余裕をかましていたデンジは、自分の放った言葉と同じ様な返事に、今度は自分が驚かされる羽目になった。
「そんなんお前がカッコいいからに決まってんだろ?」
「はぁあ!?」
「…そこ、そんな驚くところかよ」
そりゃ驚くだろ?オーバが俺をカッコいいとか思ってるなんて誰が考えるんだよ、誰も考えねーよ。
「いや…確かに俺、ナギサのスターだし顔も良いし頭もいいしポケモンバトルだってなかなかのもんじゃねーかと思ってるけどよ」
「自分で言うな自分で!」
そう、自意識過剰なフリもいい程の優良物件の如しプラスポイントを押し出したけれど、そこは世界の倣いというか世の中のパターンと言うか、俺にはしっかり落ち窪んだマイナスポイントがそれはそれはプラスを上回る数存在する訳で。

「そんな自分で言うのもなんだが俺引き篭もりだぜ?」
「只ならぬインドア派なだけだろ?」
物は言いようって言葉を、オーバは心得ているようだ。但し間違った意味で、だ。

「コミュニティ障害っつー重篤な人格障害だぜ?」
「狭く深く、人付き合いするだけだろ?」
おっかねぇ解釈しやがる…何時かトンでもない間違いを犯しそうだから、何時かちゃんと教えてやろう。

「日の高い内は殆んど外出しないんだぜ?」
「お前夜型だからな」
俺は野生動物かよ

「趣味がポケモンバトルと機械いじりだけだぜ?」
「お前趣味と実益兼ねてるかなら〜。正に天職だろ?俺もだけどさ、凄ぇじゃん、生きてる間に天職見つけてそれで喰っていけてるんだぜ?」
お前、どれだけプラスの見方してるの?確かに天職だけどさ、凄ぇ幸運で幸福だとも思うけど、今そんな見方してる時じゃねーんだよオーバさん。と、頭の中の軌道修正を図りながら次の欠点をデンジは口にする。

「家事だってお前にまかせっきりだし家汚いし」
「それはお前がやらないだけだ!実際俺がいない間それなりにやってきたんだろ?お前が家事や生活の雑事をそれなりにこなせると言う事は俺が一番よっっっく知ってらあ!」
はい、然様でございますオーバさん。実はそれなりに出来ます、でもオーバさんに甘えてあんまりしないだけです。よくご存知ですねオーバさん、でもそんなオーバだって俺の次の言葉のカウンターには上手い返しが出来ない筈だぜ!

「寧ろ性格悪いぜ?お前が一番解ってんだろ?」
「その程度慣れればなんでもねー!」
流石俺のおかん、俺のマイナスポイント如きじゃ怯みもしねぇ。寧ろ俺のカウンターまで防がれちまった、なんて鉄壁だ、これが防衛戦って奴か、かなり手強いじゃねーか!くっそ燃える

なんてデンジが馬鹿な事を考えてるとは露とも知らないオーバはごっほん、と態とらしい咳払いをして話しはじめる。
「今お前が言ったように、確かにお前は少し変わってる」
否、少しじゃねーよ。多大に、盛大に変わってんだよ。寧ろお前のフィルターが可笑しいんだよ
「でもさ、お前の顔は確かにイケメンだし、お前知ってるか?お前の鼻の形凄ぇきれーなんだぜ?すーっと通っててさ、すげー鼻が高く見えんの。そもそも目ん玉も綺麗な青だし」
「その気怠そうな目がさ、機械とポケモンバトルの時すっげぇキラキラしてさ、その後真っ青な炎みたいにメラメラ燃えるんだぜ?カッコ良すぎんだろお前!」
「その目を脇から見てるのも、その目で正面切って見られんのも俺すっげぇ好きだ」
他にもいっぱい、数えきれないくらいあるんだけどさ、
「俺が解んない事を沢山知ってる所も出来る所も、お前を作ってる全部がお前の魅力だろ?」
そうだよデンジ!
「お前が知らないお前の格好良さを、オーバさんはみ〜んな知ってんだからな!」
これが格好よくないって奴のセンスは俺には理解出来ないね!うん、俺の自慢の腐れ縁の幼馴染でか…彼氏なんだからな!うん、そうだ、かっこいくない訳がない。

ちょっと、ちょっとちょっとオーバさん!?面と向かって可愛い顔してデレるの止めていただけません?納得してるときのアヒル口止めてくれません?チューしたくなるんで、赤いアヒルか、可愛いじゃねーか

等など、またデンジが妄想に逃げている所にオーバがそれよりもよ、と話を蒸し返してきた。
「寧ろ俺が可愛く見えるとか言えるお前の方がちょっと信じらんねーっつーか、ちょっと可笑しいっつーか」
「俺の感覚は正常だアフロ!」
失礼な、と言わんばかりの眼差しを送るデンジにオーバは
「いいや、ちょっと異常だ!今お前が言ったようにオーバ様はアフロヘアーだ、そのもじゃもじゃモジャンボの何処が可愛く見えるのか、オーバさんに説明出来るのかデンジ君?」
と疑問を投げかけ、無論出来る!と胸を張ったデンジは何を思ったのか唐突にパソコンの電源をいれパソコンを起動させる。そして何かのソフトをクリックしたかと思えば徐にパソコンを俺のに向けて

「此処で画面をご覧下さい」
なんて言いやがった。おい、いきなり企業戦士に変身か。
「俺、いきなりプレゼン始める彼氏って初めて見るわー」
「俺がシンオウ初のプレゼン理系男子です」
「マジで!」
「残念な程にマジだぜ!?」
「イカス様なだっせぇ様な、何とも言えない残念っぷりが流石だぜデンジ!」
「ありがとオーバ!―で、俺の独自の研究の結果としてだな」
「相変わらず切り替え早ぇよ」
そう言いながらも流石腐れ縁、その切り替えについていきつつデンジが差し出したパソコンの画面を見る為にオーバはデンジの真横に腰を下ろした。もふっ、とデンジの顔耳や頬がオーバのアフロに埋まりデンジの鼻を爽やかな匂いが掠めていく。オーバ、シャンプー変えた?女の子に言えば唯のセクハラ発言もオーバに言えば「夏だからな」の一言で終わってしまう。気付かれない程度にふぬふぬとその髪の匂いを嗅ぎつつデンジはプレゼンを開始する。

「先ず、お前の可愛さはアフロヘアーにあるんじゃないかと俺は考え研究した」
「アフロの何を研究したんだよお前は!」
勿論あらゆる角度からアプローチしたぜ!と訳の解らないやる気を見せるデンジにオーバは脱力した。お前のやる気スイッチ、何処にあって何時押してんだよ…もっとましな事に機能してくれ。と項垂れながらデンジの話の続きを促した。
「その結果お前をストレートのロン毛にすると、唯のイケメンになる事が判明した!」
「え、嘘!じゃあ明日から俺ロン毛にするわ!」
「馬鹿野郎!イケメンが二人並んでどうする!!」
「え?それってモテ×二倍でモテモテって事じゃね?」
「そうじゃねー!お前の可愛さを論じてるのであって、お前が唯のイケメンに成り下がる話をしてるんじゃねーよ!!」
「イケメンって下がっちゃうの?!おいデンジ、イケメンってランクアップじゃねーの??」
「残念ながら唯のイケメンは他の付加価値が追いつかないとランクダウンする事が解っています」
「い…イケメンって大変なんだな」
「俺みたいなイケメンは残念なイケメンと世間様から呼ばれています」
そして残念なイケメンはどんなに付加価値をつけて補正してもなかなかランクアップが出来ないのだ、だから残念なイケメンなのだ!
「脱線した話を戻すとな、お前はアフロであるという事が重要なのだ。」
「なんだそりゃ!確かにオーバさんはアフロ大好きでアフロから抜け出せないアフロマンだけどさ、俺のその可愛さ?とか言うのにこのふわふわもじゃもじゃが如何関係すんだよ?」
「お前のアフロと顔と全体の比率が正しく調度良い!オーバ式黄金比率と言っても過言じゃねぇ、」
「何勝手な黄金比率作ってんだお前…オムナイトとオムスターの殻の黄金比率より美しいものはねーって少し前言ってたばっかじゃねーか」
「オーバ式黄金比率はオーバのみに適応される数式と美しさと愛らしさで出来てるからな、」
オムナイトとオムスターの黄金比率はまた違う次元の話なんだぞオーバ!と理系の人間しか解らない美的感覚をメモ帳に書き出して説明されそうになったが、大いなる脱線になるからと遠慮してそれで?とまた話を促した。
「そのオーバのアフロ基い赤髪と灰色の瞳、そしてアフロから伸びる太くも細くも無い首と綺麗に浮いた首筋と肩甲骨、何だかんだ言いながら鍛えてる全身とシャツから伸びる腕の長さとモンスターボールを投げる時の手首の形とズボンの裾から出る足首の長さ、サンダルを引っ掛ける足首の角度と足首の細さ」
「恐い怖い!デンジさん怖いです、デンジ君?一体オーバさんの何処から何処までを、何時何処で何時何分にそんな仔細に詳細に眺めて調べたの?!」
「調査方法は極秘です、」
「俺は知る権利があると思う!」
「知りたいか?知らない幸せも世の中には存在…」
「いいです、何も言わないで!何も聞かないから言わないでデンジ君!?」
っち、好い所なのにと半分冗談、本文本気な舌打ちをするデンジにオーバは全身が冷たくなる。熱くなったり冷たくなったり、今日のオーバの新陳代謝は大忙しだ。

「つまりだな、アフロは切欠に過ぎなかった訳だ」
もう疲れた、はぁ、とやる気のない返事をしながらデンジのプレゼンの結末を唯聞き流す。もう好きにやってくれ、オーバさんは粛々と結論を受け止めますよ。そう言った諦観めいた態度が、自分の間違いだったとオーバが気付くのはこの直ぐ後の事だった。

「外見をさて置いても、文句を言いながらも手早く家事をして俺の世話を事も無げに焼いてくれて、俺の事を丸々受け止めてくれてる。そんな人間はこの世にもどの世にも、世界中捜してもオーバ一人しか居ない訳だ。」
それってどんな彼女だよ?寧ろ嫁さんだろ?オーバさんは俺の嫁さんと言っても過言じゃねーくらいのところにいるんだよ、嫁さんが可愛くない訳がないだろ?だって可愛くて愛しくて、離れたくないから結婚するんだろ?だから俺のこの理論に間違いは無いんだよ、
「バトル馬鹿と言っても差し支えない、お前のポケモンバトルへの情熱と熱意と日々の努力と研鑽を、誰にも見えていないなんてお前が考えている影の辛い修行にもめげない、どんな時も諦めないって顔を上げ続けるお前の心根もその熱意で俺を引き上げて連れて行ってくれると言うお前の明るさも、俺には無いもので俺を先へ促してくれる。それで俺を掬い上げてくれるその手も、張りのある耳馴染みのいい声もくるくる変わって鮮やかな表情を作る綺麗な顔も、俺には全部全部可愛いんだ」
そして俺の理論は次で完成される。

「その全てをひっくるめて、オーバと言う人物が如何に俺の目に可愛く映っているのかが明らかになった。これが調査の結論だ」
以上デンジのプレゼンでした。とパソコンの電源を落としたデンジは満足気にどうだ?解ったか?と聞いてくる。俺はそれに答えられなかった、顔も上げられなくなって机に突っ伏して自慢のアフロの形が崩れるのも構わずに頭を両腕で強く抱えて顔を隠した。今の顔なんか絶対見せらんねぇ、だってデンジ、だってだって

俺今、壮絶に真っ赤!自分の髪の毛よりも自分の使うポケモンが出す炎よりも真っ赤っ赤な顔してるんだぞ?だってそうだろ?お前酷い事ばっかり言いやがるんだもん、そんな顔してそんなそんな…しかも絶っっ対解ってねーし!
どうした、感激したか?なんて的外れもいい事を聞いてくるデンジに、感激とは全く違う感情で目の奥がじわじわと熱を持ってきているオーバは掠れた声でぼそぼそと、デンジの気付いていない事実と真実、現実に起こった事を教えてやった。

「…つかさーデンジ」
「おう」
「俺等今、盛大に惚気合戦してるんだぜ?………気付いてる?」「………………っっっ!?!?!?」
がたんどたん、と何かデカイ音がしてちらりと腕と髪の隙間から覗いた先にいたデンジは真っ赤な、オクタンもビックリな茹で上がった色の顔をまるで口から出そうな魂を押さえるみたいに片手で口を塞いで残りの腕で頭を抱えていた。デンジにも羞恥心があった、新事実だ。デンジにも此処迄慌てて恥ずかしがる瞬間があった、新発見だ。頭が良くても盲点があるんだ、なんて当たり前の事を新しい発見だと喜びつつ、自分の恥ずかしさを隠す為にオーバはデンジを軽く小突いた。それに激しく動揺しながらもデンジも同じ様にオーバの脇を肘で小突いてお返しをする。
「今更、気付くなって、馬鹿っ」
「お前、も…馬鹿じゃ…ねーかよ、馬鹿っ」
馬鹿馬鹿、馬鹿を連呼しながら小突きあい、その内揉み合って床を転げた二人はその後も何言か言い合いながらお互いの顔を隠すようきつくきつく抱き締めあい続けた。それは互いの頬の熱が冷める迄、心臓の早鐘は治まる迄解ける事は無かった。






モルガナ様のリクエスト、CP不問で相手の可愛い所と格好いい所を挙げていく二人。お待たせいたしました!書きやすい組み合わせと仰っていただけて最初に構想がまとまったのがナギサだったので、ナギサの二人に任せたらあれよあれよと二人は何かの向こうに突っ切ってくれました…結論唯惚ろ気まくってるだけですね、こいつ等
ご希望に添えたか不安ですがどうぞお持ちください。何かありましたらご遠慮なく言ってください!

14/6/28





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