小説 | ナノ





綴れ綴れ(デン→オ)






いきなり何を言い出すかと思われるだろうが言おう。この世から、ラブレターは死滅していない。

現に今、俺の手の中にあるのだ。しかし其れを手渡してきたのは可愛い女の子や麗しい女性ではない。うちのジムのトレーナー(男)である。
自慢じゃないが俺、ナギサジムのジムリーダー、デンジは所謂理系の工学系、つまりメカを組むのが趣味で三度の飯よりジムの改造とポケモンバトルが大好きな青年なので、(本当に自分で言ってるのが痛々しいかもしれない)ほぼ一日中屋内、特にジムの最奥の自分の持ち場と機関部から出てくる事が無い。
必要最低限の買い出しに出る事はあれど頻度は高く見積もっても月3〜4回と言った所。そんな俺を捕まえる事が出来る女子なんてポケモンバトル大好きなエリートトレーナーか理系の女…つまり同じ穴の狢だ。そんなのが俺にラブレターなんか渡す訳が無い。渡してくるのは挑戦状か煮詰まった未完成の設計図である。ちなみに両方受け取って相手した事がある。何て清い付き合いだろうか、因みに理系の方は未だ付き合いがあってよく設計物の話で熱くなる。うん、性別関係ないし話が脱線した。

そんな訳でこのラブレターを受け取る前に毎度おなじみのやり取りをする。

「…お前からか?」
「ンなわきゃ無いでしょ気色悪い!ジムの前で託されたんですよ、渡してくれって」
「んげ、受け取るなよ」
「なら自分で断って下さい。俺の手間も省けるんで」
くそぅ、流石だな。赤アフロの次に付き合い長いだけあってか俺の屁理屈と脱線と逃避を許さねぇ。押し付けられた封筒は可愛らしい淡い色合いに丸っこい文字が踊っておりハートのシールで封がしてある…はぁ、またこの仕様か。
もう少し個性と言うか何か変化は無いのか?何故赤の他人同士なのに全くと言っていい程、仕様の同じ手紙を送ってこれるんだろうか。理解出来ん。
流石にその場で捨てるとかはしないが家に持ち帰っても結局読まない。ある程度束ねてダンボールに突っ込んでおくだけだ。変なもの入ってても恐いし、本当に興味が無い。
生い立ちの所為か元々の性質なのか、どうも俺は昔から異性に特別な感情を抱くといった傾向が無い。寧ろあまり人間に興味が無いのだ、機械いじりの方がポケモンの方が好きでポケモンバトルと言う行いを通して他人と触れ合う事以外、他人と接触を図る事が殆んど無かったのだ。
そんな俺がかなりの頻度で交流を持つオーバとの出会いもポケモンが切っ掛けだった、

俺が子供の頃のナギサは小さな田舎町で治安もあまり良くなく、ナギサの子供は比較的幼い頃からポケモンを連れて歩いていた。寧ろ、小さな子供ほどポケモンを連れていなければ安心して町を歩く事が出来なかったのだ。そんな習わしから、俺も当たり前のようにポケモンを連れ歩いていたし何か、バトルのセンスの様な物があったのだろう。同じ年頃の子供や柄の悪い大人達に一度たりとて負けた事がなかった。
その頃の俺は所謂天狗状態、はっきり言ってのぼせ上がったクソガキで。恐いものなんか殆んど無いとまで思ってた。
そんな俺が初めてポケモンバトルで負けた相手がオーバだった。それ以来なんだかんだと関係を続け、今は幼馴染や腐れ縁と言われるほど長い付き合いになっていた。何で今オーバの話かと言うと、目の前に現れたからだ。
「何だオーバか、挑戦者かと思って居眠り止めたのに」
「仕事中に寝んなバカタレ!」
「うるせー、俺の眠り妨げんじゃねーよ」
「家で寝ろ家で!」
「冗談だよアフロ、やる気無くたって寝ねーよ」
それでよろしい!なんて偉そうにふんぞり返るオーバは
「ん?それ何?」
と俺の手に握られた封筒に目をつけた。
「んーラブレター?」
「マジで?!どんだけモテんだよお前」
「お前よりはモテる!」
「言ってろ引きこもりっ」
そう言いながらもオーバは興奮気味に俺の手の中のラブレターを覗き込んでくる。テンポのよい会話は久し振りだ、そう言えばジムのトレーナーとすらさっき話したのが久し振りだった。寧ろ人間と会話したのは本当に久方ぶりだった。
「どんな子だった?」
「解んねぇ」
「は?受け取ってねーの?」
「ジムの入り口で、トレーナーに渡したらしい。俺は直接受け取ってない」
直接ラブレターを受け取った事はここ数年無い、そんな猛者、俺が見たい。
「まぁお前のジム攻略する女の子ってなかなかいねーだろ。それよりお前返事するのかよ?」
「いや、返事しねぇ。つか出来ねー。大体、住所が書かれてねーんだよ。このラブレターってのは、書いてある方少ねーんだよ」
「マジか。どうやって返事貰うんだろうなー」
本当にそうだ、此れを渡してきた彼女達は返事が欲しくなかったのだろうか。唯の一方通行な想いなのか?なら何故形の残る紙になんか認め様と思ったのだろうか。うわー、スゲー迷惑。メールにしてくれ。「……読んでやんねーの?それとも家で読むのか?」
「いや、読まねぇ。興味ねーんだよ、」
だから渡さないで欲しい、言外に含めると普段ならツッコミなりなんなりと瞬間的に相槌を打ってくるオーバからの言葉が無い。唯沈黙が続くのに違和感を感じた。
「………」
「オーバ?」
次の瞬間、覗き込んだオーバの顔がさっと振り上げられオーバの言葉が爆発した。
「人の気持ちを無碍にするんじゃねぇ!そんな人でなしな事する奴をダチに持った覚えはねえ!!帰る!」
何故いきなり本気で怒って、顔を赤くして立ち去ってしまったのだろうかオーバは。意味が解らない、そう思ったデンジの口からは素直な感想が零れていた。
「………なんなんだあのアフロ」


*


「そりゃオーバさんなら怒るでしょ、あの人誠実というか真っ直ぐな人ですから」
オーバの立ち去った姿を見たトレーナーがデンジの元に来てまた喧嘩でもしたんですか?と茶々を入れるように尋ねてきた。そんな訳あるか、彼奴が勝手に怒って勝手に帰って行っただけだ。そう正直に伝えるとへぇ珍しい!どうしたんですか?と結局振り出しに戻って、事のあらましを言う羽目になった。よくよく考えれば、俺はコイツとオーバには物を言わされている感が無きにしも非ずな気がする…大体伝えたら今の言葉に繋がって、何故かオーバの行動を肯定された。
「意味が解らん、」
「デンジさんは解らんでしょな、デンジさん人の機微に鈍いところあるし」
本当、お前とオーバだけだぜ。俺にこんなにずけずけ物を言ってくるのは
「でも俺は悪くない。手紙だって直接渡されたら流石に読んでた、最近は人任せにしてくるから本気じゃ無いんだと思って放り投げてるだけだ」
「それが人の気持ち解ってないって言うんですよアンタ、デンジさんやオーバさん、俺みたいにずけずけしてる女の子なんてそれこそ一握りもいないんですよ?」
「そりゃ…そうだろうけど」
「まず家に帰ったら今迄のラブレター読み返してみたらいんじゃないんですか?デンジさん頭良いんですから屹度俺とオーバさんの言いたい事解るでしょうや」
「読めば解るのかよそれって」
「兎に角、オーバさんと仲直りしたかったら家に帰って読む!あんたの宿題は其れですよ!!」
この歳になって、宿題出されちまったじゃねーか。あのクソアフロ。ぶつぶつと文句を垂れながらジムの奥に陣取っていたがその間中考えても結局今日も俺の所迄トレーナーは来ずじまいだし、オーバが怒った理由も解らずじまいだった。

*

帰宅後改めて、今迄貰ったラブレターの山を見つめる。山と言うより束の塊だ、堆い。もし雪崩れたら死因の一つに出来そうなくらい、巨大な山に見えてきた。でも誇張だ、実際そんなには高くも無いそれ等を抱え机の上に置いて椅子を引き、その堆い山の正面に腰を下ろす。そして山から徐に1束掴んで、輪ゴムを解き、封筒を一つ手にとって反対の手にカッターを握る。何だか大きな決意をする様封筒の隙間にカッターの刃を差し入れた。
シャリシャリ、ともサリサリともつかない紙とカッターの刃が擦れ切れていく音が静かな部屋に吸い込まれ、開いた封筒から数枚の紙を引き出し、ぱら、と音を立ててそれは開かれた。

其処からは一晩かかって読めるだけ読んだ、終わった頃には空が白んでいてジムの設計図や機会の組立て以外に始めて徹夜したんだなぁと、変に冴えた頭で考え窓の外を眺めていた。

手紙の中身は色々、様々だった。稚拙だったり理解不能だったり自分に酔ってたり、脅迫めいていたりあきらかに作為的だったり冗談めかしていたり。後髪の毛入ってたり剃刀貼っつけてあったり、なんかおぞましい物体でパンパンなのもあったし呪文書いてあったり。異様に膨らみのあるものは申し訳ないが捨てた。動いてるのもあったし…
判読不能な手紙もあったがその中で共通する事は解った。それは、

どんな理由であれ思いであれ魂胆であれ、全てのラブレターは俺の為に書かれていた。

彼女たちが綴ったその感情や情動に、俺は心当たりがあった。それを俺も抱いているとつい最近自覚したのだ。
彼女達への思慕も同情も嫌悪も沸いては来ないが、途轍もない共感は抱けた。嗚呼、そうか。この手紙の内容は、想いは、俺の彼奴への想いと同じものなのだ。彼女達は不躾ではなかった、どうやってでも想いを伝えずに入られなかったのだ、彼女達は勇敢だったのだ。勇ましかったのだ、誰よりも俺よりも俺よりも俺よりもっっ!!!!


*


それから二週間前後と言った頃?だったろうか。久しぶりに骨のあるトレーナーと心躍るバトルを楽しみ、惜しくもバッジは取れなかったが再戦を約束したトレーナーを見送った所で俺の視界が天井を舐める様に映し、残像の如し速さで壁と床を映した瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
そして、何もかも真っ暗の中から

「このっっっ…クソ馬鹿デンジ!!!」
と言う酷い罵りが響いて俺の意識は浮上した。誰だ?何て色気の無いモーニングコールだ、否、もう昼過ぎだからモーニングじゃないか…?昼どころか空が赤いじゃねーか!なんだ、何時の間に時間が進んでんだ?あれか時空の狭間に飲まれて時間がワープしたのか?寧ろ何だ此処?一体何処だ?
「お前の耳は節穴か?俺の日頃の言葉は右から左へ受け流されてたのか?お前の頭には設計図とメカとポケモンバトル以外の事はインプットされてねーのか!?」
「………?」
何の話だ?と声のする方に顔を向けると、頬に真っ白な枕が触れ、鼻に清潔なニオイ、と言うだろう消毒された空気や布のにおいが掠めた。この独特の臭いは…嗚呼、病院だ。あーそういう事か。見上げる先にいるオーバは額を手で押さえながら頭を左右に振りつつ、頭痛でもしているみたいな顔をしてまたがなった。

「栄養失調と睡眠不足って…ある程度以上の収入を得ている人間の病名じゃないだろ!どんなに稼いでも稼いでも出てっちまう借金の極致状態でもねーだろうが!」
その内死因:餓死と不眠、なんて不吉な事言われかねないぞこいつ…嗚呼、なんでこいつは毎度こうなるまで自重出来ないんだ。まったくもう、頭が痛いよオーバさんは。

どうやら、飲まず食わずの徹夜続きが祟った様だ。うーん、俺若いからまだまだいけると思ったんだけど駄目だったか…十代の頃の無茶は利かねーかぁ、残念だ。ぼんやりと、そんな事を頭の中で並べていて、次に頭に浮かんだ事をぽ、っと口に出した。
「………ジムは?」
「起きて一言目がジムかよ!でもジムの事気にしててよかったよ!!ジムは問題なく速めにオーバさんが閉めました!チマリもちゃんと家に連れて帰りました以上!」
「ん……サンキュ」
「お、おう」
俺が素直に礼を言った事に驚いたのか、オーバは拍子抜けたように尻すぼみな相槌を打った。なんだよ、そんなに俺がお礼を言うのは可笑しいのかよアフロ。
そんなオーバへ向けた視線をそのまま横へずらすと椅子に何時も来ているジャケットがかかっていた。俺はベッドに寝そべったままジャケットのポケットを漁る。少し探れば、目的のものが手に触れる。硬く薄い感触が指に手に広がり、確かに掴むとそれを碌に確認もせずに、オーバに差し出した。

*

「ん」

デンジは何の気も感情も乗らない「ん」を発しながら、椅子にかけておいたジャケットのポケットから何か白いものを取り出してきた。それはルーズリーフか大学ノートか、薄灰色の罫線が両面に印刷された紙を簡単に四つ折りしたもので、デンジが俺の胸元に突きつけてきた。何だよ、と問うても「ん」しか繰り返さずだらりと力無く持ち上げる腕を突き付けて来るばっかりで、渋々手を差し出せば俺の掌にその紙切れはそっと置かれた。どうやら、読めと言う事らしい
「……読めってか?ったく」
しょーがねーなー、と愚痴愚痴言いながらその紙切れを開けば見慣れた文字が躍っている。細かくて、妙に斜めで縦長気味の字間の狭い読みづらいデンジの文字だ。しかしそれでも何となく読めるのは付き合いの長さか―…それもあるが何故かこの紙切れに書かれた文字は何時もより真っ直ぐで、字の間隔が心なしか広く、僅かに几帳面に書かれているからだろう。
そしてその内容は、俺をとても驚かせるものだった。




拝啓、オーバ様

こうやってお手紙を書くのは初めての事ですね。敬語を使うのも初めてです。
この前は怒らせてごめんなさい、俺にとっては顔も知らないしジムに足を踏み入れず人伝に手紙を渡してくる女の人達のラブレターなんて読む価値も無いと思っていたのです。
しかし、あのラブレターを読んで考え直しました。彼女達の健気な想いを知りました、それを手紙に認めてでも伝えようとする思いの強さに驚きました。


俺も自分の想いを伝えるべきだと考えました。

人に想いを綴る行為はとても緊張しますね、しかし、面と向かって言う勇気の未だ無い俺にはこの手段しかないのです。

何時も、俺の事を心配してくれて有り難う。俺の解らない事を感情を気持ちを、何度でも説明し理解させようとしてくれて有り難う。
それをなかなか判れないでごめん、解らない儘にして何度も同じ事を言わせてごめん。これからはもう少し、解ろうとするから。
まだ時間はかかるけど俺、頑張るから。

何時も一緒に居てくれて、有り難う。

出来る事ならお返事を戴きたく存じます。

敬具

デンジ




千切られたノートの半分も行を埋めていない、短い手紙。
でも読み終わった後、何とも言えない温かさが胸を埋め尽くしていた。初めての手応えに胸が震えていた。
デンジに、俺の思いは伝わっていたのだ、僅かでも、微かにでもと毎日毎日、毎度毎度、会う度に教えていた伝えていたものがちゃんとデンジに浸透しているのだと。それを俺に返そうとしたデンジが僅かな、でも大きな一歩に自然と目は潤みそれを隠すでもなく拭いながら、俺は病院にも係わらず歓喜の叫びを上げていた。

「やりゃ出来るじゃねーかデンジ!こんな、ちゃんと人に自分の気持ち言える様になったじゃねーか!」
「…まぁな」
「お前、これ好きになった女の子にやれよな〜絶対お前を好きになってくれるぜ?」
にへら、と人好きされる笑顔が、屹度温かであろう水分に目を潤ませ、目尻を薄紅に染める目の前の男は俺に素直な感想を告げてくる。裏表無いその言葉に軽い絶望を覚えるが、大した事じゃない。こんな小さな絶望、幾度と無く経験しているのだ。だから蓋をしていた。でも、ラブレターを読んでしまったから。あんなに沢山の想いを知ってしまったから感化されてしまったんだろう、唯絶望に打ちのめされたりはしなかった。

「本当、好きな相手いねーのかよ、な?」
だから、お前に綴ったんだ。俺の唯一の愛を捧げる相手はお前だけだと、口に文字に言葉に出した事は無いが漠然と抱いている。お前は俺にとって特別な存在だ、俺の自覚は三ヶ月前のあの日に成されている、その成された想いは日々形となって組み上がり続け俺の中をどんどん占拠している。その状態は少し辛く、苦しい。吐き出せない感情はまるで目蓋迄締め付ける様な頭痛と一緒だ、堪ったもんじゃねぇ。
でも、形にしてしまうと、生み出してしまうと違うものだ。組みあがった其れ等をばらし、組み立て直す。まるで何時ものジムの改造や機械の組み立てと一緒で、ある種心躍る作業でもあった。出来上がった時若干心が軽くなった気がしたのも良い副作用だったしその証拠に軽口だってちゃんと返せる程度のメンタルも今の俺は整っている。
「……教えてやんね」
「ケチ!減りゃしねーだろ?」
でも、お前が気付かないとも思っていたから今はまだ、これでいい。反省文のつもりの、ラブレター。ロマンもムードも欠片も無い受け渡し。まだそれで構わない、
「減る、空気が減る、」
「一言二言で消費される空気を気にしてどーすんだよ!?」
「今は空気も無駄に出来ない、俺は点滴だけじゃ生きていけないと気付いたからな」
「そうか、気付いたのか。偉いなデンジ君。でもよ、気付くとかそう言うんじゃなく普通解ってる事だからそれ!」
「その普通が解ったんだからオーバ、腹減った」
「何で俺に言うんだよ!この際一泊していけ!健康診断しろ!!」
「協会の健康診断あんだろ?無駄な金は使いたくないしつかお前も受けるだろ?」
「そりゃ来月受けるけど…どうせ病院にいるんだし、なんつーかお前また引っ掛かるんだろうからこのまま前倒しして受けちまえよ。俺から先生には言ってやるからさ」
「やだ、もういたくない」
「駄々こねんな!」
何時もの不毛な、下らないやりとり。ノリと勢いに満ちた言葉の羅列、よし、戻ってきた。頭もはっきりしてきた、ああ、それでもまだ。
お前に真意を伝えるのはまだまだ怖ろしいから、だからまだこの幼馴染、腐れ縁、親友なんていう関係性に甘んじるから、次の俺の言葉は決まっている。
「オーバ、家に帰りたい。何かメシ食いたい、」
帰りたいのは事実だ、病院なんか嫌いだ、こんな所にいたいなんて思わない考えない、オーバが何時も溜息を吐く俺のちょっと散らかっている家はそれでも俺にとっては帰りつきたい我が家なのだ。
お前と長年行き来した、お前との思い出の架け橋の一部なんだ。だから其処に帰りたい、オーバ、一緒に帰ってくれよ。

俺の口に出せない部分を理解したのか、長年の付き合いから予想していたのか。オーバは眉間を顰めながら、これでもかって言うほどワザとらしい大きな溜息を吐くと一言、俺にまた此処が病院の中だと言う事を忘れているようなデカイ声で
「そうやって帰りたいって言うと思って、実は退院手続き取りました!」
と言い放った。流石だぜ、
「流石オーバだな」
「親友オーバ様に感謝しろ馬鹿!」
親友、その言葉に蟠りを覚えるようになった俺を、お前は何時か解ってくれるのだろうか?その先に進んでしまった俺を、お前は受け容れてくれるんだろうか?

何時かこのラブレターが積もる程になった頃には、この想いも口から零れてしまっているのだろうか。今はそんな事想像するだけで恐ろしいから

俺はまた、気紛れに綴るだろう。






5/23は恋文の日だと言うので。今は真面目だけれど屹度この後暫くしたらあんまりに親友幼馴染フィルター外さないオーバに吹っ切れて、ギャグ満載にオーバにアピールするんだろうな〜デンジは。



14/5/23