小説 | ナノ





今回は水場(マツバ+ミナキ)






「二人と三匹」

「…は?何だそれ」
問いには答えず、何時も通りのぼんやりとした笑顔で私を見ながらマツバは続ける。
「ミナキ君、君どっか危ない所行かなかった?」
例えば廃屋とか…ってなんだそりゃ
「側を通りはしたが…なんでだ?」
水を求めて山を歩いていたら、見つけた泉の直ぐ近くに程ほどに朽ちた家屋敷があったがだからなんだと言うんだろうか。そんなの何処にだってある
「だから二人と三匹だってば」
「廃屋とその言葉になんの関係があるんだよ、脈絡無さすぎだぞ」
帰ってきて早々なんだと…と口を開こうとしたミナキは次の言葉で凍り付いた。
「君の後ろに憑いてる人とポケモンだよ」

…後ろ?振り返るが何も居ないし何もない。自分の手持ちはボールの中だし、何より私は一人で旅をしている。道連れなんかいない、それでいてマツバが『居る』と言う事はつまり――
「な…に、か、悪いモノなの…か?」
うーん、と腕組みしながらじろじろ私の背後を見るマツバは
「何がしたいのかまだ解らないんだ、僕の前だから大人しくしてるだけかもしれない。さっきから皆目ぇ反らすし」
なんて言ってくる。うわー!実況要らない!そんなリアルタイム望んでない!
昔からマツバには余人とは違う世界が見えていて、それに興味津々で色々訪ねたあの夏の夜は未だに恐怖の思い出として記憶の奥底に封印してあると言うのにっ
その夜が開けた次の日、千里眼は万能なのかと聞いたらそれとは違うので視てるし視えると言ってた、エンジュにはそう言う人多いから土地柄じゃない?とか言ったけど!?君からしたら普通の景色と言うか何時もの光景だろうが私はそう言うのに慣れてないし普通に背筋が震えるぞ!!
「出来れば暫く水場には行かないでほしいんだけど、君は行くんだろうね」
「…スイクンは水辺にいるから」
「否、海も川も湖も泉もだけど温泉とかプールとかトイレとか浴室とか流し場とか其処迄の括りで」
どれだけの何様が後ろに御座すの私!
「それじゃあ用も足せないだろ私!!」
「……仕方ないな、僕のポケモン貸してあげるよ」
ほら、と取り出したのはゲンガー、ヨノワールと言うあからさまな組み合わせ。なんだよマツバ!怖いぞ恐いぞ!!
「ボールには入れないで、常に傍に置いていて」
「た、頼もしい護衛だな!何も無いよな?大丈夫だよな?」
「無いに越した事は無いけど万が一の時は勝手に動いてくれるから」
万が一って何マツバ、万が一どんな心霊現象起こるんだぜ?
「何時もはそんな沢山連れてこないから黙ってたんだ、君気にするかもしれないじゃない?」
今十分にとっても気にしてますですし気が気じゃ無いですがマツバさん??旅に出るのが怖くなるだろ!
「大丈夫、今日のは水辺以外じゃ元気なくなるみたいだから」
今日のってなんだよ今日のってえ!!







ミナキ君は零感、マツバはバリバリ解るタイプ。それでミナキ君が怖がりだったらなおいい。マツバは怖がらせたら可哀想だなーとか考えて日頃言わない、何かあっても自分で処理して何も言わない。よっぽどの時に口に出す、それが益々怖い。