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タイガーリリーは街燈の上(デント+アイリス)






映画やドラマで、ヒロインやヒーローが登場するシーンは決まって衝撃的であったりドラマチックである。ホームドラマやコメディなら凡庸に出てきて第一印象を派手に壊すのが定番。
それなら、今目の前の彼女はどちらに当て嵌まるのだろう?映像作品に例えたけど事実は小説より奇なり、ってこう言う時に使うようですね。ねぇヤナップ?

街燈の上に、年端も行かない女の子が登ってる。

「デントさん!見たことない女の子がへんな所に登ってるんだ、きっとあの子降りれなくなってるんだよ、助けてあげて!」

そう言う街の子供に案内され現場に辿り着くと本当に面食らった。変な所というからてっきり木の上や塀の上、若しくは屋根の上かくらいに思っていたのに正解は街燈の上。だったのだから。

見間違いか寝惚けてるのかと目を擦り何度も確かめるが、確かに街燈の上に女の子が座ってる。きょろきょろと周囲を見回しているのは降りれないから慌てている、と言う訳ではなく何かを探している様に見える。やけに落ち着いている様だがそれでも驚かせない様、そっと声を掛ける。
「…こんにちわ」
「ん?」
「…下、下を見て下さい」
「んっ、こんにちわ!」
元気な返事、笑顔で返事、どうやら降りれなくて怯えてる訳ではない様です。
「…そんなところで何をしているんですか?」
「んとね、おじいちゃんをさがしてるの!」
「…おじいちゃん?」
「おじいちゃんがまいごなの!だからアイリス、さがしてあげようとおもって!」
…ああ、迷子はあなたですよ?言ってあげようかと思ったがそれよりも街燈から降ろさなきゃ、危なっかしい。
「…一緒に捜しましょうか?」
「いいの!?ありがとう!」
するするっとあっと言う間に街燈から降りてきたポケモンの様に身軽な少女は元気な笑顔で自己紹介をしてきた。
「あたしアイリス!おにいちゃんのおなまえは?」
「…デントと言います。アイリスちゃん、宜しくね」
うん、よろしくー。わぁヤナップだ、かわいい!さわっていい?
僕の肩に乗っているヤナップに興味を示したアイリスちゃんは手渡したヤナップを優しく撫で、嬉しそうに抱き締める。普通の女の子に見えるんですが、街燈に登れる女の子は普通ではないんだろうなぁ…

それでも保護者にとっては掛け替えの無いお孫さんに違いないと考え直し、デントおにいちゃんにはあたしのキバゴかしたげる!と彼女から渡されたキバゴを片腕で何とか抱え残りの手で彼女の手を引きながら街燈の下を後にする。その動作に彼女はきょとん、と驚いた表情で見上げてきた。
「て、つなぐの?」
「…アイリスちゃんも迷子になるとアイリスちゃんのお爺ちゃんがビックリしちゃうからね、手を繋ぐのは嫌だった?」
「ううん、おじいちゃんとポケモンいがいとさいきんつないでないから、ちょっとしんせん」
「…キバゴと繋いでるんですか」
「うん!あとオノンドとね、オノノクスともてつなぐの!あたしもおじいちゃんもドラゴンタイプのポケモンもってるの!!」
「…あはは、すごいボディガードだね」
狭い歩幅に歩調を合わせてゆっくりのんびり、迷子のお爺ちゃんを捜しながらもアイリスちゃんと短くも楽しい時間を過ごす事になるとはこの時は考えもつかなかった。

*

「…それで、アイリスちゃんのお爺ちゃんはどんな人なんですか?」
「んとね、かみのけがしろくてね、めがきいろでおひげがすごいの!とげとげのもじゃもじゃ!」
「……凄い髭?とげとげもじゃもじゃ?」
「それでね、ムッキムキなの!アイリスのことかたてでひこうきできるくらいムキムキでまいにちオノノクスとすぱーりんぐっていうのするの!」
「………ポケモンとスパーリング??」
「あとね、あだながすぱるたんめーや?っていって、まちでゆうめいなの!おしごといそがしくてあんまりいえにいないんだけどアイリスにはとってもやさしいの!」
「…………スパルタんめーや???」

その後お爺さんの名前を聞き出すまでに大分時間がかかったのは言うまでも無い。





設定的にはゲームのデントとアイリスで。アニメは映画しか見ていないのでデントの性格が全然解りません。あれですね、俄な情報ですがテイスティグターイムって言うんですよね?

13/11/26