燐悪魔堕ちネタ


兄さん、兄さん、燐、

弟、が、ぼろぼろ、ぼろぼろと涙を流しながら俺の名前を呼ぶ。
弟、弟だった、人間。
隣り合わせの胚から発生し、同じ女の胎から産まれ出でた、双子、の弟。
血肉を分け与えながらも、決して混じり合うことはない。

それは当然だったのだ。
弟は人間で、俺は悪魔だったのだから。



硝煙の匂いばかりが鼻についた。
普段は気にならない、寧ろ頼もしいと言えるその匂いは、今はただ煩わしいだけだ。
「ちゃんと狙わなきゃ駄目だろ、バカだな」
昔から優秀と呼ばれるよりも優しいと称された弟だった。
そんなところが誇らしかったのだが、今はただ、優柔不断としか思えない。
殺す、と言った割にはそんなものか、と俺は足下に転がる人間の体を突つきながら溜息をついた。
2人くらいで殺す覚悟に足りないのであれば、もう期待はしない。
「なあ、俺もう行くけど、いいよな」
殺されることは嫌だが、一発くらいぶち込まれても仕方が無いと思うくらいには申し訳ないとは思っているのだ。これでも。しかし、何もしないのであれば、ここにいる必要はない。
「兄さん、どうして、」
「どうして?」
さて、今更ながらの問いに、どう答えようか。
どんな理由がお望みだろうか。
認められないから、迫害されるから、人間に絶望して?
しかしどんなに説得力のある理由を言い繕っても、後付けにしかならない。
「だって俺は悪魔じゃないか」
そして弟は人間だ。
どんなに血の繋がりを強調しても、その違いは超えられない。
同じになど、なれなかったのだ。



所詮、母の胎内にいた時から、同じ道を歩めないことは決定付られていた。



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