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「小波どうした?早くしなさい。……まさか、私の授業を上の空で受けていたなんてことはあるまいな」
うっ、図星です…。
なんて口が裂けても言えない。
眼光鋭い氷室先生に見られれば見られるほど、焦ってしまい余計にパニックになって分からなくなる。
「美奈子、これ使って」
氷室先生に気付かれないようにと前を向いたまま、琉夏くんがノートを手渡してくれる。
「小波!早くしなさい」
どうやら、ぼやっとしている時間はないようだ。
「琉夏くん、借りるね」
小声でそう言い残し、琉夏くんから茶色のノートを受け取り黒板へと向かう。
「――小波、正解だ。美しい解答だな」
「あ、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げ、そそくさと席へ戻る。
琉夏くんのノートを借りて、誉められてしまった。
なんだか申し訳ないな……。
罪悪感が心の中にじわじわと広がっていく。
そんな私をよそに、席では琉夏くんがニコニコしながら私が戻って来るのを待っていた。
「琉夏くんのノート借りて誉められちゃった……。ごめん」
そう言って席に座って、琉夏くんにノートを返す。
「いいよ、そんなの。っていうか、俺の方が美奈子に助けられてるし。気にしないで」
「……私に助けられてる?」
琉夏くんを助けた覚えは全然ないんだけど……。
何のことだろう。