▼ 紺野・設楽プレゼン 設楽も同じように思っているはずだ。 どうしても他のペアには負けられない、と。 美奈子さんと一大イベントのクリスマスを過ごすために。 「それでは、紺野・設楽ペアのプレゼンを始めます」 小さな頃からクラス委員や生徒会長をやってきたおかげで、幸いこういう発表の場には慣れている。 そういう役割は嫌々というわけではなかったけれど、進んでやっているわけでもなかった。 だけど今、初めてそのことに感謝したい気持ちになっている。 -------- 「設楽、デートプランどうしようか?」 「デートプランか。こればかりは適当に決めろって言えないな」 「そ、そうだよ!協力し合って美奈子さんの心に響くデートをプランニングしなきゃ」 「心に響くねぇ…」 デートプランというものをちゃんと組み立てたことのない僕には正直いい考えが全く浮かばなかった。 彼女と行きたいところなら、山ほどある。 でも、それは二人っきりのデートの時に取っておきたい。 わざわざ三人でデートする時に行くこともないだろう。 ……それにその場所に行きたいと言ったとしても、設楽には却下されるだろうし。 何もアイディアが出てこない僕をよそに、設楽は時折メモを取りながら一生懸命考えている。 卒業旅行の計画をたてるときは、自分からは何もプランを出さないくせに、僕が出したプランすべてにダメ出ししたくせに。 それだけ設楽は美奈子さんのことを思っているということか。 僕だってそんな設楽に負けてられないのに。 焦れば焦るほど、頭の中で浮かぶどのアイディアも全て色あせている気がして口に出すことすら憚られた。 「紺野、決まったぞ。これでいくからな」 そう言って、設楽は僕のアイディアをまったく取り入れることなく自分ひとりで全てのプランを決めてしまっていた。 -------- |