「分かった!こうすればいいんだ。美奈子、手袋貸して?」 沈黙を貫いていたルカがいきなり声をあげて美奈子の手の中にあった手袋の片方を取り、いそいそと着け始めた。 「これでオッケー。はい、それじゃ美奈子はもう一方の手袋して。で、そっちの手を貸して?」 手袋を着けてない方の手で差し出された美奈子の手を握り、ジャケットのポケットの中に入れる。 「ほら、これで二人とも寒くないだろ?一件落着。じゃ家へと急ごう」 「お、おい、ちょっと待て」 「待たない。だってコウ、さっきいらねぇって言ったじゃん」 ……言ったけどよ。 着地点がこうなると分かっていたら、あんなこと言わなかった。 俺も、美奈子に触れてぇんだ。 「……美奈子、俺にも手袋貸してくれ」 そう言いながら顔が赤くなっていくのが分かる。 それだけならなんてことないただの一言なのに、なんでこんなに恥ずかしいんだ? ああ、もう調子狂っちまう。 「うん、じゃあこっちの手袋はコウちゃんに。で、そっちの手繋ごう?」 ニコニコしながら差し出された手袋を着けると、案の定小さくて冬の風から身を隠しきれなかった。 でも、重ね合わせた手がだんだんと温かくなっていくのが心地よくて、つべこべ言わずに最初からこうしてりゃ良かったんだと思った。 「って、そこ!二人の世界を作らない。コウ、ずるい!俺が思いついたのに、いいとこどりばっかしやがってーもうグレてやる!」 「……なんだそれ。って、オマエもうグレてんじゃねーかよ。今さら何言ってんだ」 「え?こんな出/来/杉くんみたいな立派な若者掴まえて何言ってんの?おかしなお兄ちゃんだなぁ」 「金髪で長髪の出/来/杉なんて見たことねぇよ。って、もうオマエにかまってる暇はねぇ。美奈子、行くぞ」 「もう、二人とも相変わらずなんだから…うん、ほら出発しよ?」 美奈子を真ん中に挟んで歩くなんて、これもまたガキ以来のことだ。 あの頃はこんなやり取りなんかせず、当たり前のように手を繋いで歩いてたのに。 頭ん中はあの頃と何にも変わってない気がする。 けど、俺らの心と体は一丁前に美奈子を意識して、出し抜こうとしたり、上手く振る舞えなかったり。 はやくこの状態から抜け出したい。 でも、もうしばらくこのままでいたい。 そんな相反する気持ちを胸にWest Beachへと向かった。 |