相変わらず設楽の考えることはハチャメチャだ。 でも、美奈子さんの心に響く…というより心に残るようなデートプランにはなっている気がする。 「まずは、新名くんたちと同様、美奈子さんの家に迎えに行きます。……設楽家所有の車で」 一瞬、教室内にざわめきが起こる。 車でお迎えなんて、一介の高校生が出来るような芸当ではない。 設楽はそれを逆手にとって、そこからどんどん攻めていくプランを立てた。 「ちなみにその車には小型冷蔵庫やちょっとしたケータリングなども用意されていて、はばたき市から少し離れたヘリの飛行場まで行くのにもゆっくりと優雅な時間が過ごせます」 ざわめきが一層大きくなった後、設楽を見ると腕を組んでうんうんと頷いている。 ……設楽、右隣に座っている桜井兄弟を見たらダメだよ。 物凄い形相で睨んでるから。 「そして、ヘリに乗り込み夜景を見ながらクルージングを楽しんで、デート終了です。何か質問はあるかな?」 「……はい」 「桜井おと…いや、琉夏くんどうぞ」 「ねえ、カイチョー、それってセイちゃんだけで考えたプランでしょ?カイチョーはそれでいいの?そこにカイチョーの意思はないの?」 まあ…これだけお金のかかることだと、全て設楽がプランニングしたって分かるよね。 誰かにそういう風に言われるんじゃないかとは思っていたけど、正直、彼が言うとは思わなかった。 ヘラヘラしていてなんでも適当にやり過ごしていそうな彼だけど、本当は誰よりも心の機微に敏感で。 だけど、何か理由があってのことだろうけど、そう見せないように必死で演じている気がしていたんだ。 僕と同じように演じている気がしていた。 だから、彼が直接そう言ってきたことは想定外だった。 でも、僕は君が思うほど清廉潔白な人間じゃないんだ。 美奈子さんと設楽、三人でいる時も僕の方を向いてくれるように手ぐすね引いて待っているんだ。 今回もちゃんと考えてるから安心して。 だけど、誰にもそれを微塵も感じさせないようにして実行するんだ。 僕だけにしかできないやり方で。 「うーん。君が言うように、設楽の考えたプランと言うのはあってるよ。でも全てじゃない。ここで言ってないけれど、僕のアイディアもちゃんと反映させているんだよ。だから大丈夫。心配してくれてありがとう」 「……ならいいけど」 勘のいい君だから、何かを感じ取ったのかもしれない。 でも、思っていることはみんな同じ。 僕らは一蓮托生だ。 美奈子さんが欲しい。 それだけを考えて行動すれば、おのずと道は開けていくんだ。 「さ、設楽。僕らの持ち時間もそろそろなくなる。お前からも何か言っておくことはないか?」 余裕たっぷりの雰囲気で椅子に腰かけていた設楽がすっと立つ。 その態度とは裏腹に、顔が少しだけ強張っている。 設楽でも緊張することってあるんだな。 「…美奈子、クリスマスは俺達と一緒に過ごすぞ。以上」 そうして、僕たちのプレゼンは終了した。 |