「あ、コウじゃん」
もたれた窓枠の外でコウが裏門に向かって歩いているのを見つけた。
サボる気なんだろう。
さっきまで無関心を装っていた美奈子の目は、俺のその一声で明らかに泳いだ。
やっぱりオマエが反応するのはコウのことだけなのか?
美奈子の身体を俺のものにすることで、コウより一歩も二歩も先に進んでるはずなのに、気づけばコウは見えないところに行ってしまっている。
コウにはどうしても勝てないんだろうか。
他のことはどうでもいい。
美奈子だけはコウに譲りたくないんだ。
その瞬間、喉が急に渇いて、嘔吐感に支配されそうになった。
気持ち悪い。イライラする。
ただ一つの望みしか抱いてないのに、その望みは全然思うようにいかない。
どうしたらいい?
もっともっとオマエと身体を重ねれば、この苛立ちは解消できるのか?
もっとオマエを傷つけたら、解消出来るのか−…?
「……なあ、コウもここに呼んで、三人で楽しんじゃおっか?」
目を見開いて、ペニスを咥えていた口が離れる前に、頭を押さえ離れられないようにした。
既に大きくなっているペニスが喉の奥に当たって苦しいからか、それとも俺の提案があまりにも残酷だからなのか。
綺麗な形をした目からぽろりと涙がこぼれた。
苦痛にゆがむ顔。
涙で濡れる頬。
やめてと懇願するように、縋りつく目。
もっと、俺だけ見て?
その目で身体で心で俺に縋って。
「よし、決まりだ。……おーい、コウ!」
身体を窓と平行になるように捩り、コウを呼びとめる。
大きく見開いたままの目から零れる涙の量が増えた。