「吸いながら舌を尖らせて舐めて。手も使って……うん、そうそう、いい感じ。やっぱ優等生はエロいこともすぐ上手くなるんだな」
脚の間に膝をつき、窓枠にもたれる俺のズボンから取りだされたペニスを俺が言う通り頬張る美奈子。
頭を撫でながらサラサラした髪の毛を少しだけ赤く染まった耳にかけてやると、髪の毛で隠れていた顔が窓から差し込む光のもとに晒された。
美奈子の顔には、俺の言ったことに無関心を装いつつも、眉根を寄せ、苛立っているような悲しんでいるような、とにかくそんな負の感情が滲んでいた。
――あの日から、美奈子は俺に笑顔を向けることはなくなった。
美奈子のクラスが自習になったことを聞き付けた俺は、授業をサボり、空き教室に美奈子を呼び出した。
校舎の外れにあるこの教室は、まるで忘れられた存在かのようにいつでも人気がない。
この教室から少し離れたところに見えるのは、生き生きとしたサクラソウが生い茂る中にある教会。
小さい頃三人でよく遊んだ教会だ。
その頃の美奈子は教会というところに行ったことがなかったらしく、どういう場所なのか俺に尋ねてきた。
お父さんとお母さんのことを思い出してしまうから、北海道にいた頃のことはあまり喋りたくなかったのに、美奈子が相手だとそれが苦でなくなる。
「えっとね、神父様のお話を聞いたり、讃美歌を歌ったり、祈りをささげたりするところなんだ。こうやって手を組んで……」
その時、思ったんだ。
――わたし、美奈子っていうの。あなたがるかくんで、あなたがコウくんっていうんだね。なかよくしてください。
そう言って光のようなほほ笑みと共に手を差し伸べたくれた美奈子は、俺にとって神聖で慈愛に満ちたマリア様のような存在だって。
幼心に、そんな存在の彼女がずっと側に居てくれたらって。
その後、美奈子が引っ越ししたことによって、しばらく離れ離れになった俺たちは、時を経て、再びこの教会の前で再会した。
美奈子と過ごすうちに、幼心に抱いていた気持ちは内容を変え、どんどん膨んでいった。
好き。
言葉にするとたった二文字だけど、そこに込められた気持ちは、以前とは比べ物にならないくらい大きく色濃く、深くなっていった。
だけど、その数ヶ月後、この教会の前で美奈子の口からコウが好きだと告げられた。
二人のことを思い、一旦はその思いに蓋をすることに決めたけど、もう後に引けない状態になっていた。