▼ good night
琉夏くんは、私の胸に顔をうずめて眠る。
私の鼓動を確かめるように。
それは、こうして琉夏くんと当たり前のように夜を過ごすようになってから気づいたこと。
その理由を聞いても『どうしてって?美奈子の胸が柔らかくてあったかくて…大好きだからに決まってんじゃん』なんて、聞いてて恥ずかしくなるようなことを言って茶化してはぐらかす。
でも私は知っている。
私がいきなり消えてしまわないように。
琉夏くんのもとからいなくならないように。
ねえ、そう思っているからなんでしょ?
でもね、琉夏くん。
私は絶対に琉夏くんを一人になんかさせない。
言ってる意味、わかる?
琉夏くんがね、私から絶対に離れていかないようにって、ちょっとずつ不安にさせてきたの。
不安になると、心配するでしょ?
心配すると、確かめたくなるでしょ?
確かめたくなると、私のことだけ考えて何も手につかなくなるでしょ?
いつもならすぐに出る琉夏くんからの電話に出なかったり、いつもならすぐに家に帰ってきた琉夏くんを笑顔で出迎えるのに、それをしなかったり。
そういうことをちょっとずつ積み重ねていって、琉夏くんを不安にさせてきたの。
でもね、決して琉夏くんの心をいたずらに弄んでいるわけじゃないの。
それだけはわかって欲しいな。
琉夏くんのことがね、好きなの。
大好きなの。
だから、私のことだけ考えてほしいの。
どこにいても何をしていても私のことだけ考えていて欲しいの。
この気持ち、琉夏くんならわかってくれるよね?
そして、息絶えるその日までずっとそばにいて。
私が先に息絶えたら、琉夏くんも一緒に息絶えるの。
琉夏くんが先に息絶えたら、私も一緒に息絶えるから。
『琉夏くんが、琉夏くんだけが誰よりも大好きよ』
そう呟いて、縋りつくように私の身体を抱きしめて眠る規則正しい琉夏くんの鼓動を感じながら、私も眠りへと落ちていく。
私は琉夏くんがこの世に存在する限り、いなくなったりしない。
だから安心しておやすみ、愛しいひと。
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