short stories | ナノ


キミのとなり


「嵐くん、お誕生日おめでとう!」

放課後、美奈子はバイトへと向かう俺を呼び止めて紙袋を渡してきた。
ああ、そっか。俺、今日誕生日だったんだ。

「覚えててくれたんか?ありがとな。なあ、開けていい?」

「もちろん!気に入ってくれるといいんだけど…どうかなぁ…」

右の手のひらを俺に見せるように差し出して、顔を赤らめながら開封を勧める美奈子を見てたら、美奈子の頭をなでくりまわしている俺の手が無意識のうちに動いて、ほっぺたをふにふにしたくなってきた。

…まただ。なんでだ?最近、しょっちゅう美奈子に触れたくなるんだよな。


なんとか思いとどまらせた手で、プレゼントの包みを開くと、そこには最近店で見かけていいな、って思ってたスポーツバッグがあった。

「お!」

「ど、どうかな…?」

「お前、すげーな!この前店で見て気になってたんだ、これ」

「ホント?」

「うん。いいタイミングでもらえて倍嬉しいや。どうもな。大切に使わせてもらう」

「良かったぁ…嬉しい!うん、是非使ってください」

満面の笑みを浮かべ手を振る美奈子に別れを告げ、バイト先へと向かう。
もうちょいしゃべっていたかったけど、バイトに遅れるわけにはいかねーし。

それにしても美奈子のヤツ、まるで自分がプレゼントもらったみてぇに喜んでたな。
アイツ見てたら、俺まで楽しくなってくる。
そうだ、今日あんま喋れなかったから、美奈子誘って週末どっかに出かけてみっか。

よし、じゃあバイト終わってから美奈子に電話してみよう。
そう考えただけで、何故だか頬が緩んでくる。
不思議と軽くなった足取りで、勢いよく地面を蹴って駆けだした。


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