short stories | ナノ


幸せはすぐそこに


眠りにつくその前に思い浮べるのは、いつでも美奈子の顔なんだ。


両目を思いっきり閉じて飛び上がっちゃいそうなくらい喜んだ顔。
少し困ったように眉をハの字に歪ませた顔。
斜め上見て何かを考えてる顔。
怒った時に、ほっぺたをぷうっと膨らませる顔。
「チューしてもいい?」って聞いたら、すぐに真っ赤になる顔。

そして、「琉夏くん!」って俺を見つけて駆け寄って来てくれるときの最高の笑顔。


表情なんて、感情を表す単なる記号みたいなモンだって思ってた。

俺はその感情を感じとって、それに見合った感情を相手に示せばいいだけだ、って思ってた。

でも違う。

美奈子を見てると俺の中にある色んな感情が自然に出てくるんだ。

計算じゃなく、自分の感情をありのまま素直に表せる相手。
そんな子に巡り会えた。


アラーム代わりにと枕元に置いてある携帯がぶるぶる震える。

携帯を見ると、今まさに思い浮かべてた恋しくて堪らない美奈子からのメール。


『琉夏くん、今日も一日楽しかった。ありがとう。
また明日ね!おやすみなさい♪』


ああもう、ありがとうって言いたいのは俺の方だって!


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