short stories | ナノ


will


「おい、美奈子。どうしたんだ。」

教室に戻る廊下の途中で、向こう側から歩いてくる美奈子。
壁をつたいながらよろよろ歩いてるじゃねぇか。
いつもなら、すぐに俺を見つけて笑いながら駆け寄ってくるのに、今日はどうしたってんだ。

「あ、コウくん…今授業中だよ?なんで廊下にいるの…?」

「まあ、それはアレだ…っつーか、んなこたぁ今はどうでもいい。お前、顔色相当悪ぃぞ。真っ青っていうより真っ白だぞ。どっか痛ぇのか?」

はは…っと力なく笑う顔。
やっぱりばれちゃったか、なんて言ってる場合じゃねぇんじゃねぇのか。

「実は、朝から頭が痛くて…薬飲むタイミングが遅かったみたい。なかなか効かないから、保健室で少し横になろうと思って…じゃあ、私行くね?コウくん、ちゃんと教室戻んなきゃだめだよ。」

そう言いながら、美奈子は俺の横を通り過ぎ保健室へ向かって行く。
おいおい、こんな時まで人の世話ばっか焼きやがって。
っていうか、コイツのクラスの保健委員とやらは何やってんだ。
こんな状態の美奈子を一人で保健室に行かせるなんてどうかしてんじゃねぇのか。
でも、コイツのことだから授業を抜けさせるわけにはいかねぇと遠慮したんだろう。

そうしたら今、タイミング良く俺に会ったんだ。
なのになんで。

「チッ。なんで素直に言わねぇんだ。」

俺の舌打ちが聞こえたからか、美奈子の足が止まる。
そうだ、そのまま大人しくしとけ。
俺が、お前を連れてくから。


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