short stories | ナノ


セージの恩返し


とある昔の雪国でのお話。

山から家に帰る途中、おじいさんが罠にかかったそれはそれは見事な鶴を見つけた。

白に少しだけ紫がかった羽の色。こんな綺麗な鶴を放っておけるわけがない。

一面雪景色が広がる野に膝をつき、バタバタと辛そうに羽を動かす鶴を罠から外そうと悪戦苦闘するおじいさん。

「もう少し待ってるんじゃ。…よし、もう外れた。二度と罠にかかるんじゃないぞ。」

そういって声をかけ、大空で優雅に舞う鶴を背に再び家路についた。

それから数週間後。

玄関の引き戸の方から何やらガサガサと音がした。

不思議に思ったおじいさんが、引き戸を開け外を調べてみると、そこに一人の若者が白い息を吐きながら立っていた。

「おい、俺を…お前ん家に泊まらせてやっても…いいぞ。」

透き通るような肌の色に見たことのない髪の色。もしやこの方は神様じゃろうか。

「いいですよ。さあさあ、お寒いでしょう。ここに囲炉裏があるから、足元に気をつけておあがりなさい。」
    
「じいさんや、こんな時間に客人ですか…おやまあ、ここいらでは見かけないお方ですねえ。遠方からお越しですか?さあさ、何もありませんがどうぞおあがりください。」
              

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