short stories | ナノ


大切なもの


小さい頃住んでいたこの街に戻って来てから、繰り返し何度も見る夢がある。


陽が沈みゆくオレンジ色の空の下、うずくまりわんわんと泣きじゃくるわたし。

その側にいるのは、泣くのを我慢してわたしの頭を撫でてる子と、意志の強そうな目をして何やら考え事をしてる二人の男の子。

「ほらオマエら、立て。行くぞ」

そう言って、小さいながらにちゃんと男の子の手をした子と、涙を堪えながらひと足に立ち上がった子が差し伸べてくれた手をとり立ち上がる。

ギュッと握りしめた手の温もりは、夢から覚めた後もわたしの手にずっと残り続ける。


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