short stories | ナノ


皓月- the significance of existence


月の光が差し込む窓辺に腰をおろし足を掛ける。

海風もすっかり涼しくなった秋の夜。
雲ひとつない漆黒の闇が広がるばかりの空。
そこにぽっかりと浮かんだ月。

「綺麗だな…。」

窓枠に引っかけた足に頭を乗せて、すっかり暗くなった空に浮かんだ月を眺める。

「俺の頭とおんなじ色してるや。」


ずっとそうしていると、まるで自分がここに存在していないような、月が欠けていくように夜に溶けて消えていくような不思議な感覚にとらわれる。


居なくなりたい、寂しい、悲しい、とはまた違った感情。


ただ、自分自身が一番感じなきゃいけないはずの自分の「存在感」が希薄なだけ。


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