short stories | ナノ


星に願いを


もしも願いが叶うなら。
この夜にこの星にオマエは何を願う?

今日は、年に一度の彦星と織姫が会うことを許された日。

「ねえねえ、ルカちゃん!ベガとアルタイルってどの星かなぁ?」

すっかり辺りが暗くなった海辺を眼下に、俺の部屋の窓から空を見上げ、目を輝かせて星を探す美奈子。

あっちかなぁ?こっちかなぁ?なんて美奈子がはしゃぐ度に、触れあってしまいそうになるところからじわじわと熱が広がっていく。
その焦れったい熱さが海風と絡まって、身体全体をふわりと包みこむ。

美奈子が俺の隣で笑っていてくれるってことだけで、とっても幸せで。
……幸せなのに、それだけじゃ満たされなくなってるこの気持ちはなんなんだろう。

二人でいるこの時間は何よりも楽しい。
それなのに、胸の奥にぽっかりと穴が空いて埋まらないような……そんな感じがする。

二人でいるのに、寂しいって感じちゃうのはなんでなんだろう。

「孤独は一人じゃ感じられない」

ちっちゃい頃、そんな感じの歌を聞いたことがあったっけ。
その時は一人だから孤独を感じられるんじゃないの?って頭ん中はハテナでいっぱいになったけど、今はその意味がよく分かる。

当然のように、自分以外の誰かがいるからこそ、寂しいっていう感情は芽生えるんだ。
元から一人なら、そんな感情が生まれるはずはないから。
ぽっかりと空いた穴を埋められるのは、隣で笑ってくれている美奈子だけ。

だから俺はいつまで経っても満たされない。

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