short stories | ナノ


Happiness


少し肌寒くなった夕暮れの街を、二人並んで歩く帰り道。

いつからだろう。
美奈子を家まで送り届けるのが、デートとした帰りのお決まりのコースになっていた。


一秒でも長く一緒に居たくって、ちょっとだけ遠回りをする。
それに歩くスピードも、一人の時より随分ゆっくりだ。

それでも、歩き続けていればいつかゴールはやってくる。

たとえ、このままずっと一緒にいたいと願っても。


「……バイバイ」

「うん、ルカちゃん……またね?」

美奈子は、そう言いながらも、家の中に入っていこうとしない。


なぁ、名残惜しい?
もっと一緒にいたい?

俺と同じようにさ。

だけど、それは今の俺たちには無理なことなんだ。


「ねぇ、美奈子。オマエが家ん中入ってくれないと、俺、心配で帰れないよ?だから、ほら、な?」

頭に手を乗せ、ポンポンと軽く叩いて、美奈子のくりっとした目を覗き込み、にっこり笑う。

張りついたようなぎこちない笑みで。

心から笑えないのは、美奈子と離れたくないから。
出来ることなら、もう一時だって離れたくない。

だけど、俺たちはまだまだ子どもだから。

だから、夜の帳が下りる頃には、それぞれの家へと帰らなくちゃいけないんだ。

帰る家がある。
戻る場所がある。

それはとても幸せなことだけど、なんだかときどき泣きたくなるほど切ない。

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