short stories | ナノ


call my name


「ルカちゃーん!起きて」

休日の昼下がり。
窓から差し込むお日様に眠気を誘われ、ベッドの上でごろごろしてたらどうやら眠ってしまっていたらしい。

美奈子の呼ぶ声でまどろみから現実へと意識が戻ってくる。


でも、まだ起きたくない。

俺を呼ぶ美奈子の鼻にかかった甘い声が気持ち良くてずっと聞いていたいから。


「んもー!ルカちゃん、ほらもう起きて?ご飯食べよ?冷めちゃうよ」

ゆらゆら揺さぶられてもご飯というエサをぶら下げられても、生返事でやり過ごす。

もっと呼んで、俺の名前を。
何度呼ばれても、絶対に聞きあきることはないオマエの声で。



「もう!起きないと……こうしちゃうからね!」

しびれを切らした美奈子がブランケットの上から俺に覆いかぶさってきた。
心地よい重みを感じると共に、ふわっとした……どこか懐かしくて、心の奥をきゅっと締めつけるお日様の香りが俺を包む。

「ほーら!ルカちゃん、どうだ!重いでしょ?苦しいでしょ?もう、起きる気になったよね!」

甘いな、美奈子。
それじゃますます起きる気になんないよ。

飛んで火に入る夏の虫って言葉知ってる?
まあ、その場合俺が災難ってことになっちゃうけどね。
願ったり叶ったりのシチュエーション。
そんな絶好のチャンスを俺が逃すわけないよね。

くるっと身を翻して、ブランケットごと美奈子を包む。


「ねえ、俺のことどうしてくれんの?」

ブランケットごと腕の中に閉じ込めた美奈子に問いかける。

「ル、ルカちゃん!やっぱ起きてたんじゃない!もうっ!いい加減ご飯食べようよ」

真っ赤な顔してそんなこと言われても聞こえないフリ。
だって、俺はご飯よりオマエを食べたいんだもん。


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