「嵐くん、どうかした…?」
お茶を手渡そうとしている美奈子に声をかけられて、意識が戻る。
「ううん、何でもねぇ。あ、そういやお前から誕生日にもらったバッグ、早速使わせてもらった。サンキューな」
「わぁ!もう使ってくれたんだ!嬉しい。嵐くんに似合いそうだなって思ってプレゼントに決めたものだから、余計に嬉しいな。来年は何にしようかな」
俺の誕生日は過ぎたばかりなのに、もう来年のこと考えて目を輝かせてる美奈子が可愛くてしょうがない。
でも、な。
そういうプレゼントはもういらねぇや。
「美奈子、来年はプレゼントいらねぇ」
「え…?…もしかして、今まで迷惑だった…?」
目にうっすらと涙を浮かべた美奈子の頬に手を添える。
美奈子から伝わる熱が、ちょっとだけ冷たくなった俺の手に温かさを分けてくれる。
「違う、そうじゃない。そういう“モノ”はいらねぇんだ。俺はただお前にそばにいてほしい。いや、違うな。俺がお前のそばにいてぇんだ」
ふぇっと泣きだした美奈子の涙を拭う。
「嫌か?」
「嫌じゃない…展開が急過ぎてどうしたらいいか分からないんだけど、嬉しいの、とっても嬉しいの」
勢いよくかぶりを振った美奈子の顔は、悲しいような嬉しいような感じで表情が感情に追い付いていない。
こういう顔もするんだな。
また一つ、美奈子の表情を知ることが出来て俺だって嬉しいんだ。
「で、美奈子の答えは?」
「…私もずっとずっと嵐くんのとなりにいたい。来年も再来年もその先もずっと一緒にいた…」
全てを言い終わる前に、美奈子を引き寄せ腕の中に閉じ込める。
ふわっと広がる甘い香りも、柔らかな感触も、ほっとするようなこの温度も。
全部俺のモンだ。
今までもらったどのプレゼントよりも輝いてる、美奈子の「想い」というプレゼント。
嬉しくて、逃したくなくて、誰にも見せたくなくて。
そして、だらしなく緩んだ俺の顔を見られたくなくて。
俺の「想い」も一緒にのせるかのように、抱きしめる腕に更に力を込めた。