今日は美奈子とバス停で待ち合わせ。
俺の姿に気付いたのか、遠くから一生懸命走ってくる美奈子を見つけた。
転んでしまわねーか心配しながら、美奈子へと駆け寄った。
「おは…よう!嵐くん、遅れちゃってごめんね」
「謝んなくていいって。俺がお前に早く会いたかっただけだし。それよか、息整えろ、な?」
へっ…と声をあげた美奈子の顔がより一層赤くなる。
「お前、顔どうした?すげー赤いぞ。走って具合悪くなったんか?」
「ち、違うよ。具合は悪くないよ、大丈夫。…っていうか、嵐くん気づいてないんだ…」
「気づくって何にだ」
「ううん!な、なんでもない!あっ、そうだお弁当作ってきたんだ。あとで一緒に食べよ?」
腑に落ちないと思いながらも、美奈子が差し出した弁当が入った保冷バッグに意識が飛ぶ。
保冷バッグがいつものよりでかいサイズなのは、前に一緒に出かけた時に作ってもらった弁当が足りなくて、店で腹の足しになるものを買ったのを覚えてて、弁当箱を前よか大きいのを選んできたんだろう。
美奈子ってぼーっとしてるようで、色々と見て考えて心を配ってんだなってこういう時に改めて実感する。
「それ、貸せ。俺が持つ」
「えっ、いいよ。そんな重いものでもないし…」
「それ持ってたら両手塞がって、お前と手繋げねーだろ?」
なんでか目をぱちくりさせてる美奈子の隙をついて、保冷バッグを奪う。
その時、ちょうどはばたき山行きのバスが到着した。
「美奈子、このバスだ。乗るぞ。さっさと動かねーと置いてくぞ」
その言葉とは裏腹に、美奈子の手を取りバスの乗降口に近づく。
なんか、美奈子の手、いつもよか熱い気がすんだけど…気のせいか?
「へっ、あっ、うん!乗ります!」
そうして、慌ててずっこけそうになった美奈子と一緒にバスに乗り込み、はばたき山を目指した。