「あ、あれだよ!誕生日プレゼントなの。ほら、今日コウくん誕生日でしょ!誕生日には手にキスするっていうのが世間一般の常識なんです!」
…どうしよう、テンパり過ぎて意味が分からないことを言ってしまった。
コウくんは笑いをこらえてるし。
とにかく、今すぐこの場から消えてしまいたい。
「…コウくん、お誕生日おめでとう。」
ああ、もっとちゃんと顔見て伝えるはずだったのに。
なんでこんなことになったんだろう…。
「ククッ…そうか、プレゼントか。でもな、俺は手より…おい、ちっとばかしこっちに寄れ。」
そう言ってベッドから身体を起こし私を引き寄せる。
ちょっと待って、こんなに近いと私の心臓の音がコウくんにまで聞こえちゃう。
「手より…な…に…」
くちびるに柔らかな感触。
驚いて思わずコウくんから離れようとするけど、コウくんは私の身体をきつく抱きしめて離れることが出来ない。
生まれて初めてするキス。
息をするタイミングも、目を閉じるタイミングも分からない状態の私はコウくんにされるがまま。
それに、酸欠状態の頭では何も考えられないし、身体の力も抜けていってコウくんに全てを預けてる。
ねえ、なんで今私にキスしてるの。
私、コウくんの気持ち分からないんだよ。
でも、もうそんなことはどうでもよくなってきて、ただ一つのシンプルな気持ちが私の中に浮かび上がる。
私はコウくんが好き。
その気持ちだけで十分な気がする。