「あっ…びっくりした…。」
髪を撫でていた私の手をコウくんの手が軽く振り払った。
でも起きたというわけではなく、無意識のうちに振り払ったようだ。
そのまま額に置かれたコウくんの手を取る。
私のとは違って骨ばっていて、大きくて。
バイトや家事のせいか、少しだけ荒れているコウくんの手の甲を包み込む。
そして、そっと口付けた。
これもまた自分ではコントロールできないところに突き動かされた結果。
コウくんのことを好きになりすぎて、自分が自分ではなくなったみたいだ。
「美奈子…オマエ…何してんだ。」
「コ、コウくん…い、いつから起きてたの?」
「いつからって…オマエが俺の手を握ったところくらいからだ。」
なんでこのタイミングで起きちゃうの?
恥ずかしくてコウくんの顔をまともに見ることが出来ない。
「だから何してんだ、って。俺はちゃんと答えた。だからオマエもちゃんと答えろ。」
何してた、かだなんて知ってるくせに。
それでも聞いてくるなんて…コウくんのいじわる。
「コウくんの…手にキ、キスをしてました。」
「へぇ、そりゃまたなんでだ。」
なんでだ…って理由まで聞いちゃう?
好きだから、だなんてそんな心の準備も出来てないのに言える訳ない。
ああ、もうどうしたらいいの…。