short stories | ナノ





入口のプレートを見たら保健室の先生は、出張に出ていて留守との表示されていた。
だから今日はずっとここで寝てたんだ…。

保健室の前で息を整えドアを開ける。
入口から見えるベッドのカーテンの向こう側には確かに人の気配が感じられる。

そっとカーテンを開けると、ずっと探していたコウくんの姿があった。

「はあ…やっぱりここにいた…。」

どのくらい寝てるのだろう。
熟睡しすぎじゃない?
私がベッドの脇に立っても全然起きる気配はない。

それに、いつもみたいな人を取って食うような表情はどこへやら。
人の気も知らないで、何の心配もなくスヤスヤと寝入っちゃってさ。

でも…悔しいけどカッコイイ。
いつもは絶対に見せてくれない髪が乱れている姿が私の胸の真ん中あたりをきゅうっと締め付ける。

自分の意識ではコントロールできないところを甘く締め付けられるたびに、私はコウくんが好きなんだってことを何度も思い知らされる。

いつの間にこんなに好きになってたんだろう。

乱れた髪に触れ、頭の上で手をゆっくりと滑らせる。
あ、意外とサラサラで気持ちいい。
ワックスでいつもばっちり固めてあるから髪はもっと硬いと思ってた。

再会してからはずっと一緒にいるのに、こういうことも知らなかったんだと今さら思い知る。
でも、知らなかったことがなんだか嬉しい。
こうやって知らなかったコウくんのことを一つずつ知ることが出来るだなんて、これ以上幸せなことってあるんだろうか。


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