short stories | ナノ




ああ、今、俺幸せかも。

ふとそう思った。

「不死身のヒーローだから」なんて言って散々心配させるようなことばかりした。
そうしていないと生きてるっていう実感が湧かなかったんだ。

でも、今分かった。そうじゃない、生きてるってそうやって実感するもんじゃないんだ。

美奈子のくるくる変わる表情を見てる時、美奈子の事を考えてる時、美奈子と一緒に過ごしてる時、確かに俺は幸せだ、生きてるんだって感じてた。

もういいだろ?ごまかすのは、怖がるのはもう終わりにしよう。俺の隣で笑ってる美奈子がいる、その事実だけで十分だ。

あの時から止まっていた「大事な人を思う」という無意識にセーブしていた気持ちがようやく動き始めた気がした。


「よし、あともう少し。」
この坂越えて少し走ると、美奈子の家だ。

どんな顔するんだろ。どんな言葉で迎えてくれるんだろ。
汗も拭ってない顔を見て、いつもキラキラしてる目をまんまるくしちゃうかな。
でも出来れば一番最初は、あのひまわりみたいな笑顔で迎えてほしいんだ、なんて。

少しだけ息を整えて、インターホンを押す。
「はーい。」と美奈子の声がした。


その答えが出るまで、あと5秒。

         


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