「大丈夫じゃなかったら誘わないから。そんな事気にしない。さっ、あっちのベンチに座ってて。なんか飲み物買ってくるから。」
そう言って、すたすたと自販機へ歩いて行く新名くん。
人を気にさせない気づかいが上手いなぁ、新名くんって。
「はい、美奈子ちゃん。どうぞ。」
差し出された飲み物はいつだったか一緒に寄り道したときに、私が好きだって言ったミルクティだった。
「これ…好きって言ってたこと覚えてたの?」
渡されたミルクティから、じんわりとした温もりを感じた。
「もちろん!美奈子ちゃんのことなら、なんでも知ってるよ、俺。」
「もうっ、新名くんったら!」
「ハハ。何でもっていうのはちょっと言い過ぎだけど、でも俺、美奈子ちゃんがいつも頑張ってるってことはよく知ってる。勉強だってコツコツ頑張ってるし、バイトだってお客さんにとって何が一番いい環境になるか考えてるし、また来たいって思わせるような接客だってしてるし。ね?」
「新名くん…。」
気が付いたら涙が頬をつたっていた。
いきなり涙があふれてくるものだから、慌てて顔をそむけたけど新名くんにばっちり見られてた。
そうか…私、頑張っても頑張っても、なかなか結果に繋がらなくて、そんな自分にいらついたり落ち込んだりして、ずーっと気を張っていて心が疲れていた気がする。