short stories | ナノ




夢中で抱き締めていたら、かなり時間が経っていたらしい。
回された腕がトントンと俺の背中を叩く。


腕を緩めてやると、美奈子はその場でへたりこんで肩で息をしてる。
顔が真っ赤なのは、息をしづらかったからなのか、それとも…。


「悪ぃ。お前が可愛かったからつい抱き締めちまった。」


思ったままのことを言っただけなのに、美奈子はますます顔が赤くなった。

「美奈子、顔が真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃねーか?ほら、もう帰るぞ。送ってくから、俺におぶされ。」


「だ、大丈夫。熱はないし、ちゃんと自分で歩けるよ。」

と言い残し、更衣室まで駆けて行った。


まぁ、わかってて聞いたんだけど。
もうちょい美奈子に触ってたかったんだよな、俺。

でも正直断ってくれて助かった。
じゃねーと、どろっとした何かが臨界点越えちまう状態だったしな。

美奈子のこと大事にしたいと思ってるのに、めちゃくちゃにもしたくなるこの気持ち。
最近、ずっとこんな感じでモヤモヤしてんだ。なんでだ?
わかんねー。
でも、ただ一つ分かったこともある。
美奈子のこと絶対に逃がさねーから、という揺るぎない気持ちが俺の中にあること。

もしかして、これが自分以外の誰かを好きになるっていう気持ちなんかな。
そうだと良い。そうであって欲しい。


「俺も帰る準備すっか。おーい、美奈子。送ってくからちゃんと待ってろよ。」

「はーい。分かった!了解!」

今日は手を繋いで、少し遠回りをして帰ってみっか。
美奈子との時間を大事に一歩ずつ踏みしめて帰んだ。
  



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テーマ「人外ファンタジー」
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