▼ crazy for you-紺野先輩ver.-
僕は常に笑みを浮かべ、穏やかな自分を演じている。
そう、君を油断させて絡めとってがんじがらめにするために。
「紺野先輩、今帰りなら一緒に帰ってもいいですか?」
君は走って来たのか、少し息が荒い。
そのせいで、淡い桃色に染まった頬が僕の「何か」を刺激する。
「そう、今帰るところ。もちろんだよ、一緒に帰ろうか。」
君は僕を見つけると、必ず話しかけてくる。
校内で会った時はもちろん、下校する時も。
今日のように一緒に帰ることだって良くある。
そして、連絡を取り合って色んな所に出掛けたりもする。
君は僕のことを一体どう思っているのだろう。
僕は君のことを思うだけで、どうにかなってしまいそうなんだ。
だけど、今は事を起こすタイミングじゃない。そう、焦らずじっくりと罠にかけていくんだ。
僕なしじゃ生きていけないように。
「…先輩、紺野先輩。大丈夫ですか?なにか考え事でもしてましたか?」
「えっ?ああ…違うよ。ごめんね、少しぼーっとしてただけだよ。あっ、ねえ君。今日まだ時間ある?」
「今からですか?あっ、はい今日はバイトもないですし大丈夫ですよ。」
「そうか、良かった。少し遠回りになるんだけど、海沿いの方から帰らない?久しぶりに海を眺めながら歩きたい気分なんだ。」
「もちろん大丈夫です。」
君はそういって、花のような笑みをくれた。僕の本当の気持ちなど知る由もなく。