「あっ痛っ。」
「どしたの?美奈子。あれ、指切っちゃったの?」
赤く染まる左手の人差し指が目に入るやいなや、迷わずそれを口に含んだ。
美奈子のものなら、なんでも愛しいし、なんでも飲み干したいんだ、俺。
ふと美奈子を見たら、顔を真っ赤にして立っていた。
その顔が可愛くてわざと音を立てて舐めてみたら、よく熟したトマトみたいに更に顔を真っ赤にしていた。
美味しそうな美奈子。でも、ヘンなの。いつもこれ以上のことしてるのにね?
「琉夏くん。傷口舐めたら、ダ、ダメじゃない。消毒するからいったん指離して。」
口から指を離しても、その指を握ったまま美奈子に戻さずに聞く。
「へー、『いったん』ってことは、消毒終わったらもう一回舐めてもいいってこと?」
「ち、ちがっ!そうじゃなくて!間違えたの!分かってるくせに…琉夏くんのいじわる。」
「今頃分かったの?そうだよ、俺は美奈子のことが可愛すぎて好きすぎてどうにかなっちゃたんだよ。早く美奈子に責任とってもらわなきゃね。」
「せ、責任って何ですか…とにかく、ね、指は離して?お願い。」
よっぽど恥ずかしいのか、泣いてしまいそうな美奈子を見ていたら、もっといじめたくなったけどしょうがない。
今日はここまで。
「わかったよ、じゃ『いったん』離すからね?」
「ううー琉夏くんのいじわるっ!」
そう言い残して、美奈子は救急箱の置いてある部屋へ一目散に走って行った。