short stories | ナノ




ちょうど、空っぽの洗濯かごを持って部室から出てきた美奈子を掴まえる。
抱えるようにして持っていた洗濯かごを奪って放り、逃げらんねーように手をギュッと握って部室の裏手へと進んだ。

「嵐くん、離して!」

手を振り払おうとして立ち止まる美奈子。
美奈子の方に振り返り、いやだ、と首を振る。

「な、なんでよ」

「だってもうおまえに避けられたくねーんだ。なあ、おまえに伝えてーことがあるから、俺の方見て話聞いてくんねーか?そうしてくれんなら手ぇ離すから」

少しだけ迷った素振りを見せた美奈子だけど、最終的に頷いてくれた。
良かった、まだ話せる余地はあるみてーだ。

約束通り手を離したら、美奈子も約束通り俺の方を見てくれた。
避けられてから初めて目が合った嬉しさに、思わずほっと息が漏れた。

そうして、俺の気持ちを伝えていく。
どうしてあの時キスしたのか。
あのキスの理由を。

−ずっと好きだったからキスしたんだ。

どう話していいか分かんねーながらも、最後までちゃんと伝えることが出来た。
心ん中にあるもの一つも残らず全部。

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