short stories | ナノ




道場へと向かう最中、なんであの時美奈子にキスしちまったのか考えた。

あの時、よく分かんねー衝動に突き動かされた気がする。

その『よく分かんねー衝動』ってのはなんなんだ?
それに、こうなる前に浮かんでいた『美奈子と一緒にいてー』っていう感覚はどこからくるもんなんだ?

美奈子にキスしたのは。
美奈子と一緒にいてーと思うのは。

その時、美奈子にキスした時のような陽の光が俺のほっぺたを柔らかく照らした。
そして、あの時の美奈子の顔が蘇ったのと同時に感情もぶわっと蘇った。


ああ、やっと分かった。
あの時の『よく分かんねー衝動』の正体が。

愛しい、って思ったんだ。
『美奈子と一緒にいてー』って溢れだしそうになってた愛しいっていう気持ちが、とうとう決壊したんだ。

それが衝動になった。

俺は美奈子のことが好きなんだ。



美奈子を好きになったきっかけなんて、張本人の俺ですら曖昧だ。
だから、この時から好きになっただとか線引きなんて出来るもんじゃねぇ。

−ずっと好きだったからキスしたんだ。

一番ハマる言葉はこれだろうな。
だから、あの時キスしちまったんだ。
思いつく理由はそれしかねぇ。

こんな理由じゃ、美奈子をまた怒らせちまうんかな。
だけどもう何でもいいから俺の方を見てほしい。

これ以上、ぎくしゃくすんのは勘弁してーから。
あいつらの思いを無駄にしたくねーから。

それに何よりも大好きな美奈子とずっと一緒にいてーから。

-5/7-
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