short stories | ナノ




あれから部活でも学校でも、美奈子に避けられ続け、必要以上の言葉を交わすことが出来なくなった。

部活だけじゃなく休み時間やお昼時間も大抵一緒にいた俺たちが、顔も合わせずにいることはすげー目立つみてーで、クラスメートから『夫婦喧嘩か?』だとか『小波に愛想つかされちゃったか?』だとか言われるようになった。

最初の頃は、『そんなんじゃねーから』って否定してたけど、あまりにも言ってくるからそれもめんどくさくなっちまって、外野の声に反応しないようにしてたら余計に噂が広まっちまったようだ。

噂が広まるにつれ、余計に美奈子に近寄りづらくなってしまう悪循環。
どうすりゃいいんだ、って手をこまねいてる間に日々は刻一刻と過ぎていった。

こういう日々が何日続いてるんだろう。
いい加減こんな状況、何日も続けてる訳にはいかねーと思い始めた頃、琉夏と琥一に呼び出された。


「なあ、不二山。美奈子ちゃんに何かした?」

体育館裏という呼び出される所としてお約束の場所には、それぞれの部活が始まる気配が届いていた。
その中で、琉夏が口火を切って俺に詰め寄ってきた。
琥一はその後ろで、ズボンのポケットに手を入れ体育館の壁にもたれている。

「何かって、別におまえらに言わなくてもいいだろ。関係ねーし」

部活が始まる前に今日こそ美奈子とちゃんと話して、前みてーな関係に戻りてーって思ってたから、こいつらに邪魔されたような気になって、イライラをぶつけてしまった。

「それが関係あんの。美奈子ちゃんは俺たちにとってすげぇ大切な子なの。家族同然で妹みたいなもんなの。なあ、最近美奈子ちゃんが塞ぎこんでるのって、オマエが関係してるからだろ?それに前はあんなに不二山、不二山って言ってた子がオマエの話全然しなくなったし」

兄弟がいない俺には、こいつらの感覚がよく分かんねーけど、他人に興味なさそうな琉夏がここまで言うってことは、美奈子のことすげー大事にしてんだっていうのは分かった。

「……おまえの言う通り、美奈子がこうなってるのは俺が原因だ。だけど、これは俺と美奈子の問題だから誰にも話すつもりはねぇ。美奈子もおまえらに何も話してないんだろ?ってことは、あいつも俺と同じこと思ってるってことだ」

俺がそう言うと、琉夏は一瞬傷ついたような顔を見せた。
そして、今まで見たことがないくらい感情をむき出しにした顔して、俺の胸倉を掴みにかかった。

「そこまで分かってんなら、美奈子ちゃんをすぐに元通りにすること出来るよな?……俺たちじゃダメなんだ。俺たちじゃあの子を笑顔にすることが出来ねぇんだよ」

「おら、ルカ。もうその辺にしとけ。不二山も分かっただろ?俺たちがどう頑張ってもどうすることも出来ねぇんだ。オマエに任せるしかねぇんだよ」

殴りかかりそうになった琉夏を後ろから羽交い絞めにした琥一が、場をクールダウンさせるように冷静に言い放つ。
だけど、琥一も琉夏と同じような顔をしている。

「……ああ」

「小波をちゃんと笑えるようにしてやってくれ。小波の無理して笑う顔はもう見たくねぇんだ。……これからもな。だから早く行け」

琥一のその声に押されるように、足が自然と道場の方へと動きだした。

「また泣かすようなことしたら、今度は絶対に許さねぇからな」

琉夏のその声を背中に受け、道場へと急ぐ足は一段と速度を増した。

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