short stories | ナノ




「どぞ。なんもねー部屋で悪ぃけど」

世間には俺みてーのがたくさんいるのか、図書館やファミレスは学生っぽい連中で溢れてて、宿題どころか座る場所もなかった。
それで急遽、俺ん家で宿題をみてもらうことになった。
両親はそれぞれ出かけていて、今は俺と美奈子、二人っきりの状態だ。

これ狙ったわけじゃねーけど、狙ったっぽくなってねーか…?
住み慣れた家なのに、美奈子がいるってだけで違う空間に思えて妙にドキドキするし。
しかも今日に限って美奈子のカッコが……薄着でスカート短けーし…。

スラッと伸びた足や、いつもよりかなり心もとない胸元についつい目がいってしまう。

「へぇー…男の子っぽい部屋だね」

美奈子は俺の邪な気持ちを知ってか知らずかいつものトーンでそう言い放ち、俺の勧めた座布団に座り勉強道具を取りだした。

おお…美奈子、結構胸でけーんだ…。
しかも白くて柔らかそうで…触ったら気持ちいいんだろーな……。

美奈子が座布団に座ったせいで、立ちあがったままの俺の目には至福の光景が入りこんできて、色んなところを刺激する。

「さて、そろそろしよっか?何からする?」

「何からって……そりゃまあキ…」

「キ?」

やべー。
スケベなこと考えてたからか、思わずそっち方面のこと答えちまうとこだった。
キ…キ……。

「キ、き……気分転換!着いてすぐ勉強っつーのもアレだし。ほら、飲み物入れてくるから、何がいいか言え」

俺を見つめる黒々とした大きな目が細められ、少しだけ睨むような目つきになった。

「お邪魔する前にコンビニで『お礼だから』ってお茶御馳走して貰ったから、飲み物は大丈夫。ねぇ、着いて早々気分転換って、宿題やる気ないの?」

宿題をみてもらうこと自体、美奈子が先に出かける予定が入れてたのを『おまえしかいねーから』って頼みこんで叶ったことだ。

自分のペースやスケジュールを乱されるのをあまり好まない美奈子が俺のために融通をきかせてくれた。
理由は分かんねーけど、それがすげー嬉しかった。
他の奴らとは違うんだって美奈子に言われてる気がして優越感にも浸れた。

だからちっと調子に乗ってたかもしれねー。

「……ごめん、言い過ぎた」

美奈子の隣に座り、悪ぃと頭を下げたら、美奈子も俺の方を向いてぺこりと頭を下げた。

「いや、俺がいけねーんだ。おまえがここにいてくれるのが嬉しくてちっと調子に乗っちまったから」

「あ、嵐くん!だからもう…なんで……」

なんでか分かんねーけど、美奈子はいきなり顔を赤くさせたり、口ごもったりと動揺しだした。
ん?俺が素直に謝ったからか?
そんなに珍しいんかな。

っていうか、最近よくこんな感じになるよな。
なんでだろ?

「じゃ、数学からやるか。ここさ、最初から分かんねーんだけど」

不思議に思いつつも、美奈子に愛想尽かされないように、ちゃんとやる気があるとこを見せるために、話題を勉強に移した。

「あ、う、うん。どこかな…って、不二山くん、ここからってそこ問1じゃない!」

「うん」

だって、数字見てたら眠くなんだもん。
化学式見てても眠くなるけど。
ああ、英単語見てても眠くなんな。

「……嵐くん、分かった。今日は最後までとことん勉強しよう。寝ちゃダメだよ」

美奈子は、俺の心の中を見透かしたのか、寝ないようにと念を押し、一回も開いたことがなかったからか跡がついてなくて自然に閉じられてしまう俺の問題集の中心部をグッとテーブルに押し付けた。

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