「ええっ!コウくんの写真を売る!?」
「そう、まさかコウがこんなに人気だって、俺知らなくてさ。写真部のヤツらから聞いてびっくりしたよ」
こうなった経緯はこうだ。
体育祭のコウの写真が、一部の女子にすげー人気で、飛ぶように売れた。
だけど、体育祭をほとんどサボりまくったコウの写真はあんまりなくて、写真部のヤツらが俺にコウの写真持ってないかと話を持ちかけてきた。
写真部のヤツらを挟まない方が、売り上げのほとんどを俺のものに出来ると考えた俺は、写真部の話を断って、自分で売ることに決めた。
それで、美奈子ちゃんにプリントアウトの仕方を教えてもらうのと同時に、写真を売り出す前に美奈子ちゃんの気持ちをはっきり確かめちゃおうって思ったワケ。
他の女子より断然、美奈子ちゃんが大事だからね。
「ルカくん、ズル賢いよ…!っていうか、写真ホントに売っちゃうの?」
「もちろん。だって俺、毎月カッツカツだし?コウには悪いけど。でも、まあコウにも食費って形で戻ってくるから、別にいいんじゃないかなって思うんだけど。ねぇ、美奈子ちゃんはどう思う?」
「どうって…普通にダメだと思う」
「普通にダメっていう曖昧な理由なら、普通にアリっていう理由もあるよね?そういう曖昧な理由を聞いてんじゃないんだけど」
さあ、美奈子ちゃんはどうする?
イヤならイヤって、その理由まではっきり言わないと、俺、写真売りまくっちゃうよ。
「だ、だって肖像権とかそういうのがコウくんにもあるわけだし」
「ふーん、あっそ。どう考えても0点の理由なんで、俺明日から売りまくることに決めまーす。やったなー明日から豪勢なメシにありつけちゃうなー」
「ま、待って!」
美奈子ちゃんを挑発するように軽く睨んだら、慌てたようにバッと手を出してきた。
「何が『待って』なの?」
「何がって…あの…その…だから……」
「5、4、3……」
「イ、イヤなの!」
慌てふためいた幼馴染は、カウントダウンしだした俺の手を取って、大声を出した。
「イヤって何が?」
「コ、コウくんの写真が売られることがイヤです…」
「で、誰がイヤだって思うの?」
「誰がって…わたしがです…。」